資金運用(’25日米投資環境編)

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米国のトランプ大統領は20日、ワシントンの連邦議会議事堂で、新政権の経済政策と国際関係の方針を詳細に示した就任演説を行いました。この演説内容は事前に発表された政策フレームワークに沿ったものであり、市場予想の範囲内であったため、金融市場は安定的に推移しました。

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これを受けて、日本銀行は1月24日の金融政策決定会合で重要な政策転換を実施しました。具体的には、政策金利を0.25%から0.5%へ引き上げることを決定しましたが、市場は事前の報道で既に織り込み済みだったため、大きな影響は見られませんでした。

【日銀金融政策決定会合】0.5%に利上げへ 政策金利、17年ぶり水準に - 日本経済新聞
日銀は24日に開く金融政策決定会合で追加利上げを決める方向だ。政策金利とする短期金利(無担保コール翌日物レート)を0.25%から0.5%に引き上げる。2025年度も高水準の賃上げが見通せる状況になり、トランプ米大統領の就任に伴う市場の変動も...

2025年の日米投資環境は、米国新大統領の経済政策方針と日本銀行による金融政策の正常化という二つの重要な政策変更が相互に影響し合い、金融市場全体に大きな影響を及ぼすと予想されます。特に為替市場と株式市場において、その影響が顕著になると見込まれます。

本記事では、これらの政策変更が市場に与える影響について、経済指標などに基づき、複数のシナリオから詳細な分析を行っていきます。

米国の政策変更の影響

以下、日本の市場への影響について詳しく分析します。

経済政策の方向性

財政拡大シナリオ

国内外のエネルギー確保のために、石油とガスの採掘を進めとしています。特に、インフラ投資や減税政策が実行された場合、米国企業の業績向上とドル高圧力が生じます。日米間の金利差拡大により「円安ドル高」が進行し、日本の輸出企業(自動車・精密機械)にとってプラスに働く可能性があります。

(例)インフラ投資:道路・橋・空港の再建に「1兆ドル規模」の投資。

保護主義的シナリオ

対中関税の再導入や「Buy American」政策の強化が宣言された場合、サプライチェーンの分断リスクが高まります。これは特に中国依存度の高い日本の自動車部品・電子部品メーカーにマイナスの影響を与えるでしょう。

関税政策は当初の強硬姿勢から穏健化し、現在は2国間交渉を通じて有利な取引条件を模索中です。特に日中間の関税動向が注目されています。

地政学的リスク(台湾海峡・半導体規制)

  • 演説における対中強硬姿勢の表明を受け、半導体サプライチェーンへの影響が懸念されています。これにより、TSMC取引先である東京エレクトロンなどの半導体関連株の大きな株価変動が予想されます。
  • アジア太平洋地域における安全保障環境の変化は、日米同盟の強化につながっています。日米同盟の強化により、三菱重工などの防衛関連企業への投資が増加する見込みです。半導体製造装置と防衛技術の輸出規制強化も、関連企業の業績と株価に影響を与えるでしょう。

日銀の政策金利引き上げの影響

円高と資本フロー変化

為替市場

日米金利差が縮小(米国が5.5%→4.5%、日本が0%→0.5%)により、通常なら円高トレンドが進行するはずです。しかし、米国のトランプ政策や日銀の事前報道の影響で、マーケットではドル高円安傾向が継続する可能性が高いとみられます。

米国 - 利率 | 1971-2024 データ | 2025-2027 予測
現在の値は、過去のデータ、予測、統計、チャートや経済カレンダー - 米国 - 利率.

株式市場

    • 輸出企業:円高によりトヨタの営業利益は1円高ごとに400億円減少(2023年度実績)しますが、現状のドル高円安傾向が続けば影響は限定的です。
    • 国内需要株:金利上昇局面では銀行株や保険株が選好され、不動産株は調整圧力を受けやすくなります。

日銀が性急に利上げを実施した場合、現状の緩やかなインフレ状態からデフレ経済へと逆戻りするリスクが高まりますね。

国内経済への波及

家計・企業債務

変動金利住宅ローンを保有する世帯(全世帯の約30%)では利払いの増加による消費抑制が見込まれ、中小企業では資金調達コストの上昇が懸念されます。大和総研によると、以下の影響が想定されます。

0.50%への利上げが家計・企業に与える影響 | 大和総研
2025年1月23、24日に開催される金融政策決定会合で、日本銀行は政策金利を0.50%に引き上げるとの見方が広まっている。そこで本稿では、政策金利の引き上げが家計と企業に与える影響を考察する。

家計への影響】政策金利の0.25%から0.50%への引き上げにより、家計全体の純利息収入は0.2兆円増加する見込みです。ただし、この恩恵は主に高齢の資産保有層に集中し、住宅ローンを抱える30~40代世帯では逆に純利払い負担が増加することになります。

金融機関の預貯金の金利上昇が見込まれます。特に、ネット銀行の定期預金は注目に値しますね。

企業への影響】企業全体の純利息収入は0.7兆円減少する見通しです。特に非製造業・中小企業での負担増加が顕著となり、利払い費用と人件費の上昇により、中小企業の経営環境は一層厳しさを増すことが予想されます。

投資戦略の提案

  • 為替ヘッジの強化:円高リスクに備え、輸出企業への投資では外貨建て資産のポートフォリオを見直し、金などの実物資産への分散投資を検討することが望ましいです。特に為替変動の影響を受けにくい商品への投資配分を増やすことでリスクを軽減できます。
  • 金利敏感株へのシフト:金融政策の転換期では金融株に注目が集まります。メガバンクの場合、政策金利が0.5%に引き上げられるとスプレッド(貸出金利-預金金利)が拡大すると予測されています。この利ざやの改善により、金融機関の収益性向上が期待されています。
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  • 地政学リスク分散:サプライチェーンの多様化を進める企業、特にASEAN諸国などへの生産拠点の移転を行う企業(キーエンス・ファナックなど)は、地政学リスク分散により投資価値が高いとされています。
  • 日本不動産の再評価:金利上昇環境下で不動産の表面利回りは一時的に悪化が見込まれますが、円高基調になれば外国資本による東京オフィス市場への投資需要増加が期待されます。特に優良立地の物件は、長期的な価値上昇が見込まれます。

懸念点と監視指標

米国インフレ推移

コアPCE(食品とエネルギーの影響を除いた個人消費支出)の動向が重要指標です。2%超の水準が継続する場合、FRBは金融引き締め政策を維持する可能性が高まり、利下げ時期の後ろ倒しにより円安圧力が強まると予想されます。

日銀の出口戦略

国債市場の機能維持が最重要課題です。日銀は、長期国債の月間買入れ予定額を毎四半期4,000億円程度ずつ減額し、2026年1月から3月期には3兆円程度とする方針です。買入額の急激な縮小は国債市場の需給バランスを崩し、長期金利の急激な変動や市場混乱を引き起こすリスクがあるため、運用規模の調整は段階的かつ慎重に進められています。

金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について : 日本銀行 Bank of Japan

最後に

2025年の日米投資環境は、「米国の政策選択」「FRBの利下げと日銀の利上げペース」「ドル高円安の持続性」という3つの要素が複雑に絡み合い、市場に大きな影響を及ぼすことが予想されます。これらの要素は密接に関連し合い、投資家には特に慎重な判断が求められています。

短期的な投資機会としては、金利環境の変化を追い風とする金融株や、国内経済の回復から恩恵を受ける内需株が有望です。一方、中長期的には、米国では人工知能(AI)や脱炭素技術などの革新的分野に取り組む企業、日本ではデジタルトランスフォーメーション(DX)を積極推進し生産性向上を実現する企業が、特に魅力的な投資先として浮上するでしょう。

本記事の内容は一般的な見解に基づいています。市場は様々な要因により大きく変動する可能性があるため、投資判断は必ず投資家ご自身の責任でお願いいたします。

この複雑な投資環境において、シニア世代は特に慎重なリスク管理が求められます。最も重要なのは、日米の政策動向と為替相場の関係を継続的に観察し、その相互作用を詳細に分析することです。また、グローバルな政治経済情勢の変化を的確に把握し、柔軟な投資判断ができる環境を整えることが不可欠です。

参考情報 》

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