2024年は、日米両国の株式市場において、一時的な変動はあったものの、総じて順調な推移を見せました。特にアメリカ経済は力強く、当初のインフレ傾向も次第に落ち着きを取り戻し、経済とともに株式市場も堅調に推移しました。
一方、日本では、新NISAが導入された年となり、預金から投資への資金シフトが徐々に進展しました。2024年当初、日経平均株価は33,288円でスタートし、円安と好調な企業業績に支えられ、7月11日には年初来高値の42,224円を記録しました。しかし、日銀が7月末に0.25%の政策金利を導入したことを受け、専門家の多くが「急速な円高」と「米国の景気後退」を懸念し、円高と急激な株安が進行。8月5日には年初来安値の31,458円まで下落しました。
その後、日銀が「株価や為替相場が不安定な状況では利上げを行わない」との方針を明確にしたことで、株式市場は冷静さを取り戻し、株価は急速に回復。結果として、12月30日の大引けには39,894円となり、年初から6,000円以上の上昇で締めくくりました。
今回は、新NISAを中心とした2024年の米国インデックスファンドや日米株式市場の動向などについて検証していきたいと思います。
米国インデックスファンド
アメリカのインデックスファンドが新NISAで高い人気を集めている理由は、過去の実績が示すように、①運用コストの低さ、②高いリターン、③下落リスクの抑制にあります。これらの特徴により、長期・積立投資に最適な商品となっています。
代表的な商品として、日本で特に人気の高い「オールカントリー」と「S&P500」を取り上げます。以下では、SBI証券で取り扱っているこれらのファンドの特徴と新NISAがスタートして以来の2024年(1月4日~12月30日)の上昇率を紹介します。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
新NISAで最も人気の高いオルカン(オール・カントリー)は、世界中の市場に分散投資することで、特定の国や地域のリスクを軽減します。ただし、投資先の約60%がアメリカ企業であるため、米国株式市場の影響を強く受けます。

このファンドは米国の有名企業を中心とした全世界株式ファンドです。債券・不動産・金などを含む他のファンドと比べると分散効果は限定的ですが、以下の特徴から長期・分散・積立投資に最適な選択肢となっています。
運用コスト
SBI証券で取り扱っているオルカンの最大の特徴は運用コストの低さです。オルカンの信託報酬(運用管理費用)は約0.0577%のみであり、買付手数料や解約手数料は不要です。手数料面では、SBIや楽天証券などのネット証券が最も有利で、人気を集めています。
高いリターン
一時的な変動はあるものの、毎年高いリターンを実現しています。2024年の上昇率は、1月4日の基準額(20,756円)から12月30日の基準額(27,686円)までで、約33.4%となりました。この数値には為替変動の影響も含まれています。
下落リスクの抑制
オルカンは、経済状況の変化に応じてインデックスの構成銘柄を自動的に調整します。成長性の低い企業を除外し、成長が期待できる企業を追加する作業を自動的に行います。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
オルカンは「米国約60%、米国以外の先進国約30%、新興国約10%」の割合で銘柄を組み入れているのに対し、S&P500は米国の優良企業のみで構成されています。
オルカンとS&P500は主要な投資先が重複しており、オルカンも実質的にアメリカ市場の影響を強く受けます。近年の米国企業の好調な業績を反映し、S&P500は優れたパフォーマンスを示していますが、米国企業の業績が悪化した場合には、より大きな下落リスクがあります。
運用コスト
SBI証券で取り扱っているS&P500の特徴は、オルカンより若干高いものの、依然として低い運用コストにあります。S&P500の信託報酬(運用管理費用)は約0.0937%のみで、買付手数料や解約手数料は不要です。手数料面では、SBIや楽天証券などのネット証券が最も有利です。
高いリターン
一時的な変動はあるものの、毎年高いリターンを実現しています。2024年の上昇率は、1月4日の基準額(24,154円)から12月30日の基準額(34,182円)までで、約41.5%となりました。この数値には為替変動の影響も含まれています。
下落リスクの抑制
S&P500もオルカンと同様に、経済状況の変化に応じて構成銘柄を自動的に調整します。成長性の低い企業を除外し、成長が期待できる企業を追加する作業を自動で行います。
その他のインデックスファンド
オルカンやS&P500の他に、ナスダック10や楽天全米株式(楽天VTI)、eMAXIS Slim 日経平均など、様々なインデックスファンドがあります。2024年の実績からも、これらのファンドは相対的にハイリスク・ハイリターンな傾向を示しています。
リターンと下落幅は、ナスダック100>S&P500>楽天VTI>オルカンの順で、リスクとリターンの表裏一体の関係が明確に表れています。一方、eMAXIS Slim 日経平均は、この中で最小のリターンと最大の下落幅を記録したことが以下のサイトで示されています。


この結果は、7月の日銀の利上げによる円高と景気後退懸念が日経平均の下落に大きく影響したためです。一方、米国株式市場は日本に比べて影響が少なく、2024年は全般的なドル高円安傾向が日米インデックスファンドの運用成績の差を広げることとなりました。

日米株式市場
2024年は、日米の株式市場がともに好調な年となりました。日銀が7月に0.25%の政策金利を導入したことで、「急速な円高」と「米国の景気後退」が懸念され、一時的に円高と急激な株安が進行しました。しかし、今後の政策金利の方針が示されたことで市場に安心感が広がり、株価は上昇傾向に転じました。
米国市場では、8月に景気減速への懸念から株価が急落する局面がありましたが、9月にFRBが4年半ぶりの利下げに転じました。さらに、11月のアメリカ大統領選挙でのトランプ氏の勝利後は、減税策や規制緩和への期待から株価が上昇しました。
米株式市場
米国株式市場は特に好調で、生成AI関連銘柄が相場を牽引しました。2023年末と比較すると、半導体大手のNVIDIAが約2.7倍、Amazonが約44%増、Appleが約30%増となりました。
ニューヨークダウ
NHKのネット報道によると、2024年最終取引日の12月31日、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価の終値は前日比29ドル51セント安の4万2,544ドル22セントとなりました。これにより、ダウ平均株価の年間上昇率は約12.9%となり、2年連続の上昇を記録しました。

ナスダック
ハイテク関連銘柄が多いナスダックは、年初月初始値14,873.7ドルから2024年最終取引日の12月31日には19,310.8ドルとなり、年間上昇率約29.8%で2年連続の上昇を記録しました。
日本株式市場
年初から7月初旬にかけては、新NISAによる「貯蓄から投資へ」の流れを受けて年初来高値を記録しました。その後、日銀の政策金利引き上げへの懸念から一時的な大幅下落を経験しましたが、年末には4万円近くまで回復しています。

日本の株式市場では海外投資家が主導的な役割を果たしており、日銀の政策金利に対して特に敏感に反応することが明らかになりました。円安基調が海外投資家による日本市場への投資を促す重要な要因となっています。

日本の預貯金等の金利動向
日本では、日銀による0.25%の政策金利導入に伴い、預貯金や国債の金利が見直されました。今後の金融政策の展開によっては、さらなる金利の引き上げが予想されます。

金融機関の預貯金の金利
一般的に、ネット銀行は大手銀行より高い金利を提供しています。これは店舗運営費などの経費削減分を預金金利に還元できるためです。さらに、ネット銀行は新規顧客獲得のため、競争力のある金利を積極的に打ち出しています。

ようやく日本でも金利のある世界が広がり始めましたね。

個人国債
国債も預貯金の金利同様に、ようやく少しづつ金利が高くなりつつあります。これは日本経済の回復基調と金融政策の転換を反映したもので、投資家にとって安全性の高い運用手段としての国債の魅力が徐々に増してきています。

このほか、「金」や代表的な暗号資産である「ビットコイン」も大幅に上昇しました。
今後は、「金」をポートフォリオに組み込むことが有効な選択肢となるでしょう。また、「ビットコイン」などのハイリスク資産や為替変動の大きい外貨については、将来の成長期待や円価値に対するリスク分散の観点から、資産全体の5%以内で段階的な投資を検討することもお勧めします。
最後に
相場格言に「閑散に売りなし」とあるように、2025年への期待感が高まれば年末相場は強含みとなるでしょう。ただし、本年1月20日に大統領就任が予定されるトランプ氏の所信表明に市場の注目が集まっています。トランプ政権2.0の可能性を含むアメリカの政策動向は日本にとっても重要な関心事であり、特に関税政策を含む今後のインフレ動向を慎重に見守る必要があります。
米国FOMC(連邦公開市場委員会)は直近の会合でタカ派的な姿勢を示し、2025年中の利下げ予想回数を4回から2回へと引き下げました。一方、日銀は12月の会合で追加利上げを見送り、2025年の追加利上げについても極めて慎重な姿勢を保っています。当面は、本年1月の追加利上げの実施可能性が注目されています。
2024年のドル高円安傾向は定着しつつあります。アメリカの利下げペース減速や日銀の利上げ先送りが予想される中、この円安基調が続けば、2025年第1四半期も輸出企業を中心に増益基調が持続し、2025年への期待感が一層高まるでしょう。2025年度の上場企業の予想増益率は4%から10%の範囲で推移していますが、インフレ環境下では実際の名目増益率が予想を上回る可能性が高いと考えられます。
2025年のアメリカ経済は、移民政策の見直しや関税リスクは残るものの、シェールガス増産による原油価格の安定化で、ソフトインフレの時代を迎えると予想されます。米中対立の激化は、状況次第で日本に漁夫の利をもたらす可能性もあります。

トランプ政権がもたらす「嵐」は、必ずしも日本の投資家にとってマイナスとはならず、市場原則を重視した「押したら買い」の基本戦略は、引き続き有効な選択肢となると思われます。
《 参考情報 》


