シニア世代に入ると、経営者を除き、会社を退職する時期が現実的な課題として浮上してきます。従来は定年まで勤務し、退職金を受け取った後に年金生活へ移行するという一般的なライフプランが主流でしたが、現在では働き方の多様化により、個人のニーズや状況に応じて様々なキャリアパスを選択できるようになっています。
退職後も、豊富な経験と専門知識を活かして同じ会社での継続雇用や、別会社での再就職を選択する人が増えています。現在の統計では70歳まで就業を継続する人が約半数に達し、シニア世代の労働市場への参加が活発化しています。一方、十分な資産を形成した方の中には、早期退職して趣味や旅行を楽しむ生活を選択する人も増えています。
ただし、年齢を重ねるにつれて年金受給者が増加し、多くの方にとって年金収入が生活費の中心となっていくのが一般的です。年金生活では収入が固定化されるため、自由に使える資金が限られると感じる方も少なくありません。このような状況は、生活の質や選択の自由に大きな影響を与える可能性があります。
本記事では、シニア世代の生活をより豊かにする要素として、可処分所得の増やし方を考察します。可処分所得とは、総収入から税金や社会保険料を差し引いた、実際に使える資金のことです。これを効果的に増やすことで、より充実したシニアライフを実現できるでしょう。
年金収入を主な収入源とする場合、税金や社会保険料の控除後の手取り額、つまり自由に使えるお金が大幅に減少することを実感せざるを得ませんね。
可処分所得を増やすことの重要性
可処分所得は、私たちの実質的な生活水準を決定する重要な指標です。これは通常、「総収入 – 税金 – 社会保険料 – その他控除」で算出されます。可処分所得を増やすことは、生活の質を向上させる重要な要素で、以下に具体的なメリットを説明します。
- 貯蓄: 老後資金の確保や、予期せぬ支出への備え、将来の大きな買い物のための資金を積み立てることができます。特に、医療費や介護費用など、年齢とともに増加する支出への備えとして重要です。
- 投資: 余裕資金を様々な投資商品に回すことで、将来的な資産形成や、配当収入などの安定的な収入源を確保できます。これにより、長期的な経済的安定性が高まります。
- 消費: 趣味や娯楽、家族との旅行、生活の質を向上させる商品やサービスの購入など、より豊かな生活を実現できます。これにより、日々の生活がより充実したものになります。
十分な可処分所得があれば、将来への不安が軽減され、精神的な余裕と安定が得られます。また、予期せぬ出費が発生しても、柔軟に対応することができますね。
可処分所得を増やす具体的な方法
シニア世代になると還暦も近づき、退職時期の判断が重要になってきます。ここでは、退職後の可処分所得を増やすための具体的な方策について考えます。
新たな収入源を得る
- 資金運用:必要不可欠な資金を確保した上で、退職金などの余裕資金を株式や投資信託などの金融商品に投資し、配当金や値上がり益による収入を得ます。投資対象は自身の年齢やリスク許容度に応じて慎重に選択します。
投資を始める前に、以下の基本的な知識を理解することが大切です。本記事では様々な投資方法を紹介していますので、ご自身に最適な方法を選んでください。
- 不動産投資:十分な資金がある場合、アパートやマンションなどの不動産を購入し、賃貸運用で安定的な家賃収入を得ます。立地や物件の管理状態、将来的な価値変動を十分に考慮して選択します。
- SNSの活用:自身の経験やスキル、専門知識を活かし、ブログやYouTube、Instagramなどで情報発信を行ます。広告収入や企業とのタイアップ、オンラインコース販売で収益を得ます。
支出を減らす
固定費の見直し
- 家賃:賃貸の場合には、現在の住居費を見直し、必要に応じて家賃の低い物件やシェアハウスを検討します。住み替え時は交通の利便性や周辺施設も考慮します。
- 通信費:利用状況に合わせて格安SIMへの切り替えや不要なオプションの解約を検討します。家族での共同契約による割引も活用します。
- 保険:加入中の保険の補償内容を見直し、重複や過剰な保障がないか確認します。必要に応じて契約内容の変更や解約を行います。
通信費や保険料の見直しは、予想以上の支出削減効果が得られることがありますね。
変動費の削減
- 食費:旬の食材を活用した節約レシピの実践や自炊を増やします。まとめ買いやポイント活用で食材費を抑えるよう工夫します。
- 娯楽費:外食を見直し、地域の無料イベントや文化施設、シニア向け割引を活用します。趣味活動も費用対効果を考えます。
- 買い物:日用品は必要なものに絞り、セール時期を活用します。購入前に必要性を十分検討し、衝動買いを避けます。
節税対策
- NISA(少額投資非課税制度):株式投資や投資信託の運用益が非課税となる制度を活用します。投資限度額と非課税期間を考慮し、計画的に投資を行います。
- ふるさと納税:住民税と所得税の一部が控除され、返礼品も受け取れる制度を活用します。寄付先と控除上限額を考慮して計画的に実施します。
その他の対策
- スキルアップ:デジタルスキルや語学などをオンライン講座で習得し、キャリアアップや副業の機会を広げます。
- 家計簿管理:日々の収支を記録し、支出パターンを分析します。マネーフォワード MEなどのスマートフォンアプリを活用して、効率的な家計管理を行います。
デジタルスキルなどの教養を身につけられるオンライン学習サービス「gacco」をはじめ、語学学習アプリや家計簿アプリなど、多様な無料サービスが増えています。
注意点
- 無理のない範囲で:過度な節約や投資は、心身のストレスにつながる可能性があります。
- 将来を見据えて:短期的な成果だけでなく、長期的な視点を持って計画的に行動しましょう。
- 専門家への相談:必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも検討しましょう。
最後に
可処分所得を増やす方法は様々ですが、ご自身の状況に合わせて、最適な方法を選び、実践していくことが大切です。
可処分所得を増やそうとする際に避けて通れないのが「年収の壁」です。特に、103万円、106万円、130万円という基準額は多くの方にとって馴染み深いのではないでしょうか。これらの壁は、税金や社会保険料の制度と密接に関連しており、超過すると様々な影響が生じます。
これらの基準額を超えると、税金や社会保険料の負担増により手取り額が減少し、結果的に可処分所得が低下します。特に、103万円と106万円の壁は、配偶者が就労している世帯に大きな影響を及ぼす可能性があります。
このような収入の壁は確かに可処分所得を増やす上での課題となりますが、適切な理解と対策により、克服することは可能です。
本稿では、資金運用に不可欠な可処分所得を増やす方法と、政府が検討中の「年収の壁」について考察しました。今後は、103万円の基準額引き上げに伴う106万円、130万円の壁の行方が注目されます。
これらの制度変更を正しく理解し、より豊かなシニアライフを実現できることを願っています。
免責事項: 本情報は、一般的な情報提供を目的としたものであり、金融商品への投資を勧めるものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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