今や世界中の誰もが知るMLB界のスーパースター、大谷翔平選手。そのスポンサー契約は日米合わせて20社以上にも及んでいます。
大谷選手は2024年シーズン、米大リーグで史上初となる「50–50(50本塁打50盗塁)」の快挙を達成しました。ドジャースをナショナル・リーグ西地区優勝に導いたスター性が、多数の広告起用につながっています。ただし、契約企業の株価への寄与度には差が出ています。
大谷選手率いるドジャースは地区シリーズに進出し、リーグ優勝決定シリーズ、ワールドシリーズでも優勝を重ね、そのプレゼンスをさらに高めています。企業は今後の広告効果に大きな期待を寄せているはずです。
大谷選手は、クリーンなイメージと相まって、怪我などがあっても2021年以降、毎年大活躍を続けています。野球界だけでなく日米で絶大な人気を誇る大谷選手は、世界的にも二刀流選手として名を馳せています。契約企業数は年々増加しており、2024年の契約金は100億円を超えると予想されています。
本記事では、大谷選手と契約を結んでいる企業の中から代表的なものを取り上げ、彼が各企業のイメージ向上、売上、そして株価にもたらした効果について考察したいと思います。
大谷選手は走・攻・守の三拍子揃った二刀流のスーパースターです。今年は怪我のため打者に専念せざるを得ませんでしたが、本来の打撃力と走力を遺憾なく発揮できた一年となりましたね。
特徴的な企業3社
大谷選手と契約を結んでいる企業の中から、今回は特徴的な3社を取り上げます。
ディップ
ディップ株式会社は、日本の求人情報サービス企業で、2023年から大谷翔平選手とアンバサダー契約を結んでいます。大谷選手はディップのアルバイト求人情報サイト「バイトル」の広告キャンペーンに登場し、若者たちに働くことの重要性を伝えています。
ディップは大谷選手を起用する企業の中で、今シーズン株価が比較的堅調な動きを示しています。大谷選手出演のコマーシャルは、動画配信サイトYouTubeで570万回以上再生され、同社の知名度向上に大きく貢献しました。
ディップの社名の由来である「Dream(夢)」や「Passion(情熱)」は、大谷選手の活躍する姿と共鳴するものがあるとされています。また、同社の比較的小規模な企業規模が、広告効果を高める要因の一つになっていると見られています。
評価ポイント
企業業績:業績にも効果が表れています。会社四季報によると、今期(25年2月期)第1四半期の営業利益は前年同期比20%増の40億円となり、第1四半期としては創業以来最高を記録しました。冨田英揮社長は決算説明会で、大谷選手との契約による宣伝効果がすでに契約金を上回っていると述べています。
株価:2023年以降、当社のアンバサダーに就任して以来、売上などの業績は増加しました。しかし、株価については一時的な向上は見られたものの、全体的には漸減傾向にあります。
セイコーグループ
セイコーは2022年10月に「セイコーホールディングス株式会社」から「セイコーグループ株式会社」へと社名を変更しました。この戦略的な決断は、グループ全体の一体感を強化し、グローバル市場での競争力を高めるためのものです。新社名は、セイコーブランドの歴史と伝統を尊重しつつ、未来への展望を示す象徴となっています。
2019年から大谷翔平選手とサプライヤー契約を結んでいるセイコーは、最先端技術の腕時計で大谷選手のパフォーマンスをサポートしています。大谷選手を起用したプロモーション活動は多様なプラットフォームで展開され、ブランドの認知度向上に貢献しています。
セイコーは大谷選手のクリーンなイメージとグローバルな活躍に共感し、自社の企業理念との一致を見出しています。大谷選手を単なる広告塔ではなく、ブランドの価値観を体現するアンバサダーとして起用することで、特に若い世代や国際市場での人気を高めることに成功しています。
評価ポイント
企業業績:契約後、新型コロナウイルス流行時には一時的に低迷したものの、2021年以降は大谷選手の活躍とともに、売上と営業利益が毎年増収増益を記録しています。
株価:2021年以降、業績の回復に伴い株価も着実に上昇しています。2024年6月には、同社の株価が上場以来最高値(5,120円)を記録しました。
JAL(日本航空)
「新・経営の神様」と呼ばれる稲盛和夫氏は、倒産したJALの会長に就任後、わずか2年8カ月で再上場へ導いたことで知られています。近年、JALは「価値創造ストーリー」という理念・ビジョンを掲げ、ESG戦略を軸とした経営を推進しています。
JALは2018年から大谷翔平選手とスポンサー契約を結んでいます。この提携により、JALは大谷選手の試合観戦チケットやグッズのプレゼントキャンペーン、特別塗装機の運航など、多彩なプロモーション活動を展開しています。JALは大谷選手の「世界に挑戦する姿勢」と「日本の誇りを胸に戦う姿」に共感し、彼の活動を全面的にサポートしています。
評価ポイント
企業業績:契約後、業績は順調に回復していましたが、新型コロナの影響で再度大きなダメージを受けました。その後、2021年以降は大谷選手の躍進と相まって、新型コロナの終息に向かうにつれ、業績も大きく回復傾向にあります。
株価:再上場後、業績の回復に伴い株価も着実に上昇していましたが、新型コロナの影響を大きく受け、一時期株価も大幅に下落し低迷しました。新型コロナの悪影響が薄まるにつれ、株価も回復傾向にありましたが、2023年6月に高値を付けて以降、徐々に下落し始め、2024年8月以降2500円前後で停滞しています。
全体的な評価
大谷選手とのスポンサー契約は、多くの企業に業績の好循環をもたらしています。しかし、株価は業績だけでなく、為替や金利などの外部要因にも大きく影響されるため、必ずしも上昇するとは限りません。ここでは、様々な企業を分析し、大谷選手とのスポンサー契約において重要な要素をいくつか紹介します。
企業の理念やビジョンが大谷選手の考え方やイメージと合致
これは最重要ポイントです。大谷選手は高校生の頃からMLBでの活躍を目指し、世界一の選手になるべく絶え間ない努力を続けてきました。二刀流という前例のない挑戦で大きな成果を上げ、MLBでの成功を実現しました。優れた人間性と誠実さから、クリーンなイメージが定着しています。このような考え方やイメージが契約企業の理念やビジョンと合致する企業こそが、業績や株価に好影響をもたらすと考えられます。 [例:セイコーグループ(株)、三菱UFJ銀行(株)]
比較的規模が小さくメジャーでない企業の宣伝効果
有名な大企業は、知名度が高いため宣伝効果はそれほど大きくありません。一方、新しい優れたサービスや商品を持つ企業は、即座に宣伝効果が期待できます。大企業の場合、多様なサービスや商品を扱っているため、一部のヒット商品が全体の業績に与える影響は限定的です。しかし、比較的小規模な企業では、サービスや商品が大ヒットすれば、売上など業績に大きく貢献します。 [例:ディップ(株)]
為替、金利、世界情勢などの外部要因を強く受ける企業
新型コロナウイルスの流行初期には、飲食業や観光業などのサービス業界が大きな打撃を受けました。このような事態では、業績回復が非常に困難です。現在の日本経済は外国人観光客によるインバウンド需要に支えられている面が大きく、また投資市場でも外国人投資家が日本株の約7割を占めているため、為替や金利の動向が重要です。
大谷選手の影響で業績が伸びていても、これらの外部要因により企業の株価に必ずしも反映されず、下落傾向が続く場合もあります。 [例:JAL(株)]
最後に
大谷選手は今年も素晴らしい活躍を見せました。ドジャースのワールドシリーズ優勝に貢献しただけでなく、数多くの個人タイトルも獲得しています。2年連続2度目の「ハンク・アーロン賞(最優秀打者)」、4年連続の「エドガー・マルチネス賞(最優秀指名打者)」、そして「オールMLB」指名打者部門(ファーストチーム)の3つを受賞しました。
さらに、最高の栄誉である年間最優秀選手(MVP)の発表が11月21日(日本時間22日)に予定されています。大谷選手が受賞すれば、2年連続3度目のMVP獲得となり、史上2人目のア・ナ両リーグでのMVP受賞者となります。
今シーズンは、ワールドシリーズの最終戦で左肩を脱臼してしまいましたが、来年度は打者としてだけでなく、投手としても復活する予定で、大いに期待が高まっています。大谷選手は、毎年幾度となく怪我に見舞われながらも、常に期待を上回る活躍を続けています。2025年は、並外れた打撃に加え、投手としても大活躍を見せてくれそうです。
2025年には、これまで以上にスポンサー企業が増えることが予想されます。大谷選手のファンで、どの企業に投資するか迷っている方は、本記事で紹介した新たな視点を参考にしてみてはいかがでしょうか。
今回は、MLBの大谷選手ファンの視点から企業分析を行いました。私自身も大谷選手の熱烈なファンで、毎試合を楽しみに観戦しています。2025年には投手としても復帰する予定であり、その活躍を心から楽しみにしています。
《 参考情報 》