これまでに、シニア世代が資金運用に取り組む際に直面する問題を解決するための基本方針を解説してきました。これらの方針は、初心者から経験者までが理解しやすいように、投資の基本原則から様々な投資戦略を網羅しています。さらに、今年から導入された新NISAの詳細についても、その特徴と利点を明確に説明しました。
特に、シニア世代の投資初心者に対して、資金運用に関する注意点を具体的で理解しやすい言葉で解説してきました。この情報は、資金運用の成功を目指す皆さんが正確な判断を下すためのものです。
しかし、投資や資金運用には常に新たな注意点が出てきます。一定の余裕資金ができやすいシニア世代、特に50代や60代の方々は、「投資の罠」に陥りやすい傾向があります。これらの罠は初めて投資する人々にとって見落としやすく、無意識のうちに大きな損失を引き起こす可能性があります。
この年代では、遺産によって予想以上の金額が手に入ることがあります。しかし、このようなときに誤って怪しい投資話を信じてしまうと、「投資の罠」に陥り、予期しない損失を被る可能性がありますね。
そのため、今回は、「投資の罠」について詳しく掘り下げて考察します。これらの罠を理解し、それを避けるための適切な対処法を学ぶことで、シニア世代の皆様が資金運用での成功を収めるための道筋を示すことができればと考えています。
投資の成功は、資金運用の知識と経験だけでなく、常に新たな情報を得て、その情報を自己の戦略に適応させる能力にも関係します。この記事を通じて、皆様がより賢明な投資判断を下すための一助となれば幸いです。
あなたの資産を脅かす3つの罠
通常、教育費などの支出が減少する50代以降のシニア世代は、収入の増加により貯蓄が増える傾向にあります。2022年の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」結果によれば、50代の平均貯蓄額は1,828万円、60代は2,458万円で、平均貯蓄額は年代が上がるごとに増加し、60代でピークを迎えます。これは、退職者が多い60代に退職金や遺産による貯蓄の急増が主な理由と考えられます。一方、70代以降は主に年金のみになるため、貯蓄が徐々に減少します。
したがって、100年時代に向けた人生プランを考える際、余裕資金が生まれやすい50代、60代の資金運用が重要になります。本記事では、このシニア世代の運用初心者が陥りやすい「3つの罠」を解説します。
証券会社窓口での罠
50代以降のシニア世代は、現在の仕事だけでなく、自身の健康や親の介護などの問題を抱えていることがあります。新たに金融投資を始めるとき、ネット証券の口座開設が面倒だ感じる人も多いため、大手証券会社の窓口に相談し、口座を開設する人もいます。
ネット証券が一般的でない時代には、証券会社の窓口で口座開設をするのが当然でした。当時は今よりも手数料が高く、バブル期には証券会社が大きな利益を上げていましたね。
証券会社の窓口では、説明が上手な接客専門の女性が対応してくれ、多くはファイナンシャルプランナーなどの資格を持っています。特に、退職金などで余裕資金が生まれた場合、これからの資金運用を検討する機会が増えます。そんな時、窓口で勧められた商品を購入する人もいます。
私はネット証券をおすすめしますが、確かに今でも一定数の人が証券会社の窓口で口座を開設しています。当然、手数料はネット証券より高く、金融商品によっては手数料が非常に高くなることがあります。運用成績が良いときは手数料があまり気にならないこともありますが、株価の低迷により運用成績が悪いときには高い手数料を実感し、購入を後悔する人もいるのは確かですね。
窓口では、顧客の資産を把握した上で、手数料の高いアクティブファンドやファンドラップを勧めることが多いという事実があります。これは、インデックスファンドよりも信託報酬が高いためです。会社の利益が優先される傾向があるため、特に注意が必要です。
このブログ記事で何度も紹介しているように、投資初心者の基本戦略は、新NISAのつみたて枠を活用したインデックスファンドの積立投資です。この戦略を手数料の安いネット証券で続けることで、統計的に運用成績を上げる確率が高くなります。さらに、資金に余裕がある方は、新NISAの成長枠を活用したインデックスファンドのスポット購入や個別株の購入も検討することが良い方法であると考えています。
長期保有できない罠
今年、年初から株価は順調に推移し、3月には4万円台に到達し、現在では3万9円台で安定しています。株式市場は、今年のように比較的に順調に推移することもありますが、新型コロナや戦争など世界経済に大きな影響を与える出来事が発生すると、急激に下がる可能性もあります。このような時、投資初心者はパニックになり易く、株やファンドを安値で手放す人も多いのが現状です。株式市場が急に下がると、どこまで下がるか、いつまで続くのかが不明で、とても不安になります。
しかし、不安定な状況下でも、インデックスファンドの積立投資は非常に有効です。定額積立の場合、株式市場が大きく下落しても、毎月下落した相場の株価を基準に購入することで、不安感を軽減できます。また、このような時期にはインデックスファンドのスポット購入や個別株の購入が特に有効ですが、さらなる下落を恐れて購入をためらってしまうのが一般的です。
私は、株価が下落した時に、特にNISA枠で個別株を購入しています。株式市場全体が下落した時でも、落ち込むことはありません。それを購入のチャンスと捉えていますね。
株式市場では、好調な時に市場を疑い、不調な時にチャンスをつかむことが重要です。そのためにも、市場が好調な時こそ現金比率を高め、来るべきチャンスを待つ必要があります。そのチャンスを活かせば、あなたも素晴らしい投資成果を残すことが可能になるでしょう。
魅力的な投資話の罠
最近の投資関連記事では、新NISAを活用した投資初心者に向けて、ネット証券口座の開設の重要性、投資目的の明確化、リスク許容度の理解などを詳しく説明しています。これらは投資を始める際の基本的なステップで、理解することで初めて有意義な投資活動が可能になります。
しかし、株式市場を理解するためには相応の学習時間が必要です。特に、複雑な金融商品を扱う場合には理解度が投資結果に直結するため、慎重になるべきです。
それでも、株式市場を十分に理解せずに投資を始める人は少なくありません。近年、SNSを通じて広まる情報の信頼性が問われるケースが増えています。有名人を装った広告や詐欺目的の広告が見られ、一般の投資家が混乱を招く事態になっています。有名な経済評論家のLINEグループを装った偽アカウントも存在し、これらを通じて暗号資産への投資が推奨されることもあります。
私からのアドバイスは、常に冷静な判断を持つことの重要性を認識することです。人間は美味しい話に弱い傾向がありますが、突然自分だけに美味しい話が来ることは稀です。そのため、そのような情報に対しては疑いの目を持つことが大切です。
最後に
余裕資金が増える50代、60代は人生の黄金期とも言えますが、投資初心者など資金運用についての知識や経験が不足していると、「投資の罠」にはまりやすいと言われています。以下に、注意すべきポイントと適切な資金運用の方法を示します。
最初の罠は、証券会社の窓口で口座を開設する際に、高い手数料の商品を勧められることです。この罠を避ける基本戦略は、新NISAのつみたて枠を活用したインデックスファンドの積立投資を考慮することです。これにより、投資のリスクを分散と長期投資での成果が期待できます。
次の罠は、株式市場が急激に下落すると、パニックになり、株を安値で売却してしまうことです。しかし、定額積立投資ならば、長期的な視点からそれが一時的な現象であると理解できます。そのため、市場の変動に動じず、計画どおりの投資を続けることが重要です。
最後の罠は、SNSなどで広まる情報の信頼性です。不確かな情報に基づいて投資を行うと、大損する可能性があります。そのため、SNSで流れる情報には冷静に対応し、美味しい話に弱い人間性を持つ私たち自身が、そのような情報に対して疑いの目を持つことが求められます。
このブログ記事で何度も紹介しているように、投資初心者の基本は新NISAを活用した長期・分散・積立投資ですね。特に、50代以降のシニア世代では、安全性や確実性が一層求められます。これらを念頭に置き、健康で豊かな人生100年時代を過ごせることを願っています。