このブログでは、シニア世代の資金運用について多角的にアドバイスを提供してきました。今回は、特にシニア世代の運用資金の活用方法に焦点を当てて考察します。
資金運用が順調に進むと、運用資金は増えます。これは一見、素晴らしい結果に見えますが、増加した運用資金の活用法や適切な管理方法についての問題が生じるかもしれません。この問題は、特に資金運用の成功を経験した人々にとって新たな課題となり得ます。シニア世代の中には、自身が亡くなった時に運用資金が最大になるケースも少なくありません。
これは、シニア世代が資金運用に成功し、資産を増やすのが得意である一方、その資金を有効に活用できていないことを示しています。将来の不確実性による不安を抱える日本人にとって、資金の有効活用は難しいかもしれません。
今回は、運用資産を管理する際の見落としがちなポイントについて触れていきます。少しでも参考になれば幸いです。
資金の活用方法
シニア世代にとっては、年齢を重ねるたびに自由に活動できる時間が減少するという実感が深まります。とは言っても、自分の余命がどれほどあるのかは確定的なものではなく、不確定な要素が多く、だれも予想ができません。
しかし、特定の事故や予見不可能な自然災害を除くと、自身の健康状態、生活習慣、遺伝的な要素を考慮すれば、寿命を大まかに予測することは可能です。そのため、自身の身体がまだ自由に動き、活動できる間に、手元に蓄積した運用資産を有効に活用することが大切です。その具体的な活用方法を考えるにあたり、次のような資産の現状や活用目的などを整理し、現実的な運用計画を立てることが必要です。
金融資産活用ノートの作成
シニア世代が金融資産を活用する方法は、70歳以降の資金活用が重要になるため、まず現在の金融資産を正確に把握し、収入と支出を分けて余裕資金を明確にすることが必要です。収入は通常、年金が主体ですが、仕事を続けている方や副収入がある方もいます。
支出は、日常生活に必要な食費、水道光熱費、通信費などの固定費が必須です。これらの差額と蓄積した金融資産が余裕資金となります。差額がマイナスだと余裕資金が減り、活用範囲が制限されることもあります。しかし、差額が0またはプラスであれば、余裕資金は比較的自由に使うことができます。
余裕資金の活用方法を考える際には、生計を共にしている家庭用バランスシートで管理するのが理想的です。しかし、株式は変動が大きいため、シニア世代が長期間続けるのは難しいでしょう。そこで、変動が少ない定期貯金の他に、株式、投資信託、国債などの有価証券の合計を明記することを提案します。
有価証券の価格は日々変動するため、必要に応じ年4回程度の見直しを行うと良いでしょう。そして明確になった余裕資金を以下のような活用を検討します。
自然災害、事故、あるいは突然の病気など、予期しきれない出来事に備えて、余裕資金の30%程度を確保しておくことも重要ですね。
事前に準備すべき活用事例
私が長年両親の介護をしてきた経験から、特に必要とされる費用についての一例は、以下のとおりです。以下は家庭によって若干異なりますが、シニア世代が余裕資金の中から事前に準備しておいた方が良いと思われる費用となります。これらの中には子供たちが負担してくれるものがあるかもしれませんが、家族に迷惑をかけないためにも自分(夫婦)で用意すべきものと考えています。
リフォーム
高齢者にとって、自宅のバリアフリー化、断熱対策、耐震対策などの安全対策は重要性を増しています。また、老朽化した住まいの改修も必要な場合もあります。これは、身体機能の衰えにより日常生活の移動や活動が困難になる可能性があるからです。さらに、住環境の適性は高齢者の健康や生活の質に大きな影響を与えます。
そのため、自宅の改修や設備の更新が求められ、これらの問題を予防し、高齢者が安心して自宅で生活できるようにすることが必要です。自宅での生活を長く続けることは、精神的にも良い影響を与え、生活の質を向上させます。したがって、自宅での生活を支えるための改修や設備の更新は、高齢者の生活の質を高める重要な投資と言えます。
シニア世代が安心して地域で暮らすためにも、自宅の改修などのリフォームは必要不可欠ですね。
介護医療費
私たちの社会では、多くの人がガン保険や医療保険に加入していることが一般的です。保険は予期しない事態に備える重要なツールで、安心して生活するために役立っています。しかし、実際には入院時の差額ベッド代や最新医療技術の利用など、保険の適用外となり自己負担が必要なケースが少なくありません。
一方、介護保険には加入が義務付けられ、制度自体が異なります。介護保険は、家庭訪問サービス、デイサービス、ショートステイなど、利用者の介護度に応じたサービスを提供します。利用の範囲はその介護度により制限され、介護が長期化すれば経済的負担も増大します。
さらに、在宅介護が困難になった場合、有料老人ホームや介護施設への入所を考えることもあります。しかし、これらの施設の利用には入所費用や生活費、医療介護費用が発生し、高額になることも多いため、準備をしておくことが重要です。
私たち夫婦もいずれ高齢者施設への入居を決める時が来ると予想しています。家族に迷惑をかけたくない考えから、そのための準備資金はすでに用意しています。しかし、ロボットや生成AIの進歩が著しいため、家庭専用の介護ロボットが普及し、地域で安心して生活できる未来が訪れるかもしれませんね。
葬儀費用
近年、新型コロナウイルスの影響で家族葬が増加しています。社会的距離の維持や人間関係の接触を避ける新しい生活様式が、この傾向を後押ししています。家族葬は通常の葬儀に比べて規模が小さく、参列者が限定されるため、費用を抑えることが可能です。したがって、経済的な観点からも、家族葬の人気が高まっています。
ただし、家族葬を行うには適切な準備とそれなりの費用が必要です。これには、葬儀の場所の手配、参列者への連絡、葬儀社との調整などが含まれます。これらの準備は時間と労力を必要としますが、家族の意向を尊重し、故人を偲ぶためには必須です。
葬儀をどのように行うかを決定するのは非常に難しいことです。本人の意志と遺族の願いが必ずしも一致するわけではありませんね。
その他の活用事例
この余裕資金は、使い道はフリーなので自由に使えるお金です。これは個人の考えにより千差万別であり、趣味や遊びに使いたい方や、金融資産をもっと増やしたい方、子供たちに遺産として残したい方もいるでしょう。そのような中で、私たち夫婦が最も重要視している活用方法について紹介します。
個々に合った社会貢献
*自治体への寄付行為
今年の元日に発生した能登半島地震は、記憶に新しい悲劇です。多くの復興資金が必要と考え、夫婦それぞれが異なる自治体へ寄付を行いました。今後も寄付を続けるつもりです。また、毎年ふるさと納税を行っており、今年は被災した自治体へのふるさと納税(寄付型も含む)も考慮に入れていきたいと思います。
*寄付型クラウドファウンディング
寄付型クラウドファンディングとは、社会問題の解決を目指す企業や団体が支援者から「寄付金」を募ることです。基本的にはクラウドファンディングサイトを通じて募集が行われます。活動目的が明確であるため、寄付者はより納得感を持って寄付することができます。これについては、まだ実際行っていませんが、今検討中で被災した中小企業に投資したいと考えています。
*エンジェル投資の拡大
前回述べた通り、私は「ESGやSDGs投資」を積極的に行い、社会貢献型企業の成長と発展を支援しています。これは、社会的、環境的、経済的な価値創造を目指す企業へのコミットメントの一環です。2023年からは、エンジェル投資を新たな形の支援として開始ししました。さらに、2024年には、エンジェル投資の一環として、社会貢献が期待できるスタートアップ企業へのさらなる支援を計画しています。
教育や趣味への投資
*教育への投資
早期退職後、新たな挑戦として法律と経営学を学ぶために大学や大学院に進学しました。一方、妻は彼女の好きなガーデニングを基礎から学ぶために、生涯学習大学校の園芸・まちづくりコースに在籍しています。これらの学びは現在の投資や税金対策などに活用されており、また、このブログで紹介している「庭づくり」にも役立っています。
*趣味への投資
趣味の面では、車と旅行の費用が大きくなっています。最近購入した車はまだ新しいので、あと1回程度新車に乗り換える予定です。旅行は今後拡大予定で、最終的にはクルーズで世界一周を計画しており、これは大きな投資となります。余裕資金はできるだけ有意義に活用し、最終的には約30パーセントの余裕資金を残したいと考えています。
最後に
今回は、資金運用から得られる余裕資金の活用方法や事例について説明しました。私の信念は、「お金は生きている間に有意義に使い、活用するべきだ」ということです。一方で、資金運用は上手でも、その使い方や活用方法がうまくいかない人が多いのも事実です。例えば、認知症や寝たきりになってしまった場合、お金の管理が難しくなり、自分で使ったり活用することは困難になります。
そのような状況を防ぐためにも、元気なうちに余裕資金の使い方や活用方法をしっかり考えておく必要があります。これは、私が両親の介護から学んだ実体験であり、紛れもない事実です。
そのためにも、自分の金融資産を中心とした情報を分かりやすく整理しておくノートが必要です。それはエンディングノートでも構いません。預貯金や有価証券、不動産、保険などの資産状況を明確にすること、家族や親族表を作成すること、遺産や相続人が多い場合には遺言書を作成することをおすすめします。
さらに、ローンやクレジットカード、キャッシュカードの情報も必要です。ネット証券や銀行を利用している場合は、IDやパスワード、暗証番号なども必要になりますので、これらも大切に保管しておくことが重要となりますね。