シニア世代が資金運用に取り組む際、一般的には個人個人が自己責任の下で自分自身の資金を運用するというパターンが見受けられます。これは、自己の資金を自己で管理し、運用することが一般的な原則であるため、それは自然な流れとも言えるでしょう。しかし、シニア世代の特性を考えると、年齢が上がるほど、パートナーの一方が先に亡くなるといったケースが増えるのが現実です。これは、互いの生活の質を維持するための重要な考慮事項となります。
特に、シニア世代が後期高齢期(75歳以上)に突入すると、これからの生活を見据えた資金運用の重要性が増してきます。住宅ローンの返済が終わり、子供たちが独立した後の生活は、安全で安心した退職生活を確保することが主な目標となる期間です。この新たなライフステージでは、生活費の予測、健康管理、将来の計画など、多くの要素が資金運用の方針を決定するのに重要な役割を果たします。
そこで、今回のブログ記事では、シニア世代がパートナーと共に資金運用を行う際に考慮すべき「3つのポイント」について、深掘りしてみたいと思います。これらのポイントは、共同での資金運用を成功させ、安定した生活を続けるための重要な要素となります。
ここで言及しているパートナーとは一般的には夫婦を指すものですが、法的に認知されていない同性婚や事実婚のカップルも含まれます。すべてのカップルが対象で、共に資金運用を行い、お互いの生活を支え合うことが重要ですね。
考慮すべき「3つのポイント」
シニア世代がパートナーと共に資金運用を行う際に、特に考慮すべき重要ポイントは、以下の3点となります。
資金運用方法の検証
このブログでも何度となく強調してきたように、シニア世代にとって特に適している投資戦略の一つは、時間をかけてゆっくりと利益を生む長期投資です。この長期投資とは、数年から数十年にわたり、株式や債券、その他のさまざまな資産クラスへと分散投資を行うことを指します。時間の経過とともに、これらの投資は投資リスクを軽減しつつも安定した収益を生む可能性があります。
ただし、株式投資は一定のリスクを伴うものです。したがって、それらのリスクを十分に理解し、投資を多様化することによって全体の資産を保護することが大切です。また、年齢を重ねるにつれて、リスクをとることが難しくなった場合には、比較的安全資産とされる預貯金や国債に投資をシフトすることも重要な戦略となります。
加えて、年代やライフステージに応じて投資戦略を微調整し、最適な資金運用を行うことも有効です。その詳細については、以下のブログ記事で詳しく解説していますので、ぜひ参照してみてください。
また、パートナーとの投資戦略の検討も大変重要です。パートナーがこれまでどのような投資方針を持っていたのか、現在の運用資金の状況はどうなっているのかをしっかりと確認し、それを基に投資戦略を見直し、最適化することが大切となります。
私は、ネット証券での投資の基礎をパートナーから学びました。お互いの投資状況などを把握しており、アドバイスなどの意見交換も行っています。
金融資産等の明確化
シニア世代、特に高齢のカップル間で、資産の明確化と活用方法の確認作業は、年齢を重ねるごとにその重要性が増してきます。人間の命は予測不可能であり、突然の死を迎えることもあるため、そのような不測の事態に備え、事前に資産管理ノート(エンディングノートを含む)を整備しておくことは非常に大切です。
家族の資産は、一緒に時間をかけて築き上げたものであり、その管理と活用は家族全体の重要な課題となります。大きな出費を伴うこと、例えば海外旅行や家のリフォームなどについては、十分な検討と話し合いが必要となります。日本人の間では、生前に金融資産を充分に活用せずに亡くなるケースが時々見受けられます。その結果、人が最も資産を持っているのは、亡くなった時という皮肉な事態も見られます。
しかしながら、結婚していても金融資産は個々に帰属します。そのため、その資産をどのように活用するかは、各個人の自由であり、それぞれの意志を尊重すべきだと考えています。それぞれの独立した意思に基づいて行動することで、家族間の誤解やいさかいを避けることができるでしょう。
お互いの資産状況は、資産管理システム等で概ね把握しており、株価が急激に下がった時の対策や安全資産への移行などについても話し合っています。また、家のリフォーム等の大きな出費についても、そのための資金を事前に確保するなどの対策をしていますね。
相続対策への理解
相続対策はシニア世代にとって重要な課題です。不測の事態に備え、資産管理状況を明確にすることが第一歩です。特に、ネット銀行やネット証券を活用している場合、利用金融機関名だけでなく、IDやパスワードも記録しておくことが必要です。
次に重要な対策は、法定相続人が多い場合には遺言書を残すことです。遺言書がない場合、遺産分割協議書に基づいて遺産を受け取ることになります。法定相続人が多いと、協議がまとまらず家裁調停裁定となることがあります。また、法定相続分は法律で定められています。
遺言書により相続が定められていても、法定相続人は家裁に申し出ることで最低でも遺留分を受け取ることができます。また、独身で遺族がいない場合、遺言書がないと遺産は国庫に帰属します。
さらに、相続した人は相続税を支払う必要がある場合があります。相続税の基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。遺産総額が基礎控除額を超えると申告義務がありますが、配偶者には最大1億6,000万円までの控除が適用され、課税対象になることは稀です。
相続税については、税法の改正も含め、まだ理解しなければならない事柄が多く、複雑で理解しにくいのが現状です。相続税について、以下の分かりやすい動画がありましたので、参考にしてください。
最後に
シニア世代にとって資金運用の方法は極めて重要で、特に長期投資が推奨されます。長期投資はマーケットの短期的な変動から保護を提供します。また、投資の多様化と高齢化に伴う安全資産への移行は、リスクの分散と資産の安全性の確保に必要です。
さらに、パートナーとの投資戦略の議論は、資産運用の方向性を明確にし、共有の目標に効率的に進むために重要です。資産の明示と活用法の確認は、資産の現状を把握し、最適な運用方法を見つけるために役立ちます。
最後に、相続対策として、資産管理を明確にすることが必要です。これには遺産についての正確な理解と、遺言書の作成が含まれます。適切な資産管理と相続税についての理解を深めることで、未来の不確実性を軽減することができます。
私自身、両親の介護をしながら資産管理を行ってきました。20年以上にわたり両親の介護を続け、母から少しずつ資産状況の情報を受け取ってきました。父の入院と母の認知能力の衰えに伴い、親の金融資産の大部分を金融機関に信託し、日常生活費だけを私が管理していました。
このような管理のおかげで、両親が亡くなった後の遺産分割は問題なく、スムーズに行うことができました。金融資産が多くなればなるほど、残された遺族のもめごとの原因にもなりますので、より正確な金融資産の把握が必要ですね。
人生100年時代といわれ久しいですが、人はいつ死ぬかは誰もわかりません。残された人生を悔いのないものにするためにも、パートナーと共に「3つのポイント」を押さえながら、より充実した人生を歩めればいいなと考えています。