50歳を過ぎ、人生のシニアのステージに進んだと感じ始めると、将来の経済的安定について一層深く考える時間が増えます。子供たちが成長し、自立して大学などの教育費の負担がなくなり、さらには長年にわたる住宅ローンの返済も終了した今、次の人生のステージに向けて新たな資金計画を立てる必要があります。これは、退職後の生活を安心して過ごすために必要な持続可能な財源を構築し、自己の生活を支えるための重要な時期です。
今回の記事は、これからの生活を豊かで安定したものにするために重要となる、シニアの資金運用計画における税金の基本事項に焦点を当てています。これらの税金を理解することで、金融投資における節税対策について考えてみたいと思います。
金融投資
資金運用における長期投資は、シニアに推奨される金融戦略の一つです。これは、数年から数十年にわたって資金を運用するという考え方に基づいています。長期的には、株式や債券、投資信託などの投資商品がリスクを抑えつつまずまずのリターンを生むことができます。しかし、すべての投資にはそれぞれのリスクが伴うことを理解することが必要です。
したがって、リスクを分散するための投資の多様化は、長期投資を管理する上で重要な部分です。これらの投資から得られる収入、つまり配当や資本利益は課税対象となる可能性があります。それでは、日本の株や債券、配当などにどのような税金がかかるのでしょうか。
株、配当金、債券の売買や対する税金について
株式投資を行うと、基本的に譲渡益(キャピタルゲイン)に対して所得税15%と住民税5%の合計20%の税金がかかります。ただし、2037年12月末までは、これに復興特別所得税0.315%が加算され、合計税率は20.315%になります。株式を売却して損失が出てしまった場合には、税金はかかりません。
配当金を受け取る際には、税金が源泉徴収されます。上場株式等の配当については、15.315%の所得税等と住民税5%が源泉徴収されます。一方、上場株式等以外の配当については、20.42%の所得税等が源泉徴収されます。
債券投資から得られる利益にも税金が課されます。特定公社債の利子は、「利子所得」として税率20.315%が課税されます。しかし、源泉徴収のみで申告は不要です。確定申告する場合は申告分離課税となります。売却や償還により得た特定公社債の譲渡益や償還差益は、「上場株式等の譲渡所得等」として税率20.315%の申告分離課税となります。
なお、2016年1月以降、日本国債や公募普通社債などの一部の公社債の利子・償還差損益・譲渡損益の課税方式が見直され、上場株式等の配当金や譲渡損益との損益通算が認められるようになりました。
証券口座について
証券会社の口座には、「特定口座」と「一般口座」の2種類が存在します。「特定口座」は「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」に分けられます。特定口座(源泉徴収あり)で売却した株式については、確定申告の義務は発生しません。また、「NISA」では特定の株式や投資信託の購入に関しては、非課税となる優遇税制が適用されるため、確定申告は不要です。
確定申告が必要なのは、一般口座と源泉徴収なしの特定口座の場合です。ただし、一般口座、または特定口座(源泉徴収なし)で株を売買し、譲渡益が20万円以下の場合は、確定申告は不要となります。
課税方式について
課税方式には、「総合課税」と「申告分離課税」があります。なお、特定口座の「源泉徴収あり」を選択すると証券会社が損益の計算から税金の支払いまで自動で行なってくれます。株式投資で得られた譲渡益の所得は、他の所得と合算できない「申告分離課税」で行われ、上場株式等の配当等については、「総合課税」と「申告分離課税」のどちらかを選ぶことが可能となります。
ここでは、シニア世代にも利用しやすい節税になる対策について考えてみます。
節税対策について
このブログでも何回となく触れた新NISAの他にも、様々な節税方法が考えられますが、その中でぜひ覚えておきたい対策について紹介します。
新NISA活用による節税効果
新NISAは、投資枠の拡大により大幅に活用の範囲が広がります。その中で、シニア世代が特に重視したいのが日本の高配当株です。投資運用の基本は、長期投資で最も期待されるのが原則年2回の配当です。安定した高配当を無税で受け取ることができるため、とても魅力的な投資戦略となります。
日本の現在のインフレ状況ではとても年金のみでは豊かな生活することは困難です。元気な間は働くことはできるでしょうが、いずれは年金生活が中心となる人が大半です。その中で、毎年一定額の配当を受け取れるのは、本当にありがたいことです。また、積立枠を利用した「投資信託の配当」も定期的にもらえるので利用価値は高まるものと考えています。
ただし、投資にはリスクがつきものです。長期投資を行っていると評価額が大幅に下がる場合もあります。そうした際に、どうしても手放さない場合が生じたとしても、NISA制度は「損益通算」の対象にならないことを忘れないでください。
投資は、あくまでも余裕資金で行うようにするのが大切ですね。
確定申告による節税効果
繰越控除と損益通算
株式投資を行う中で、株取引で損失が出た場合に「繰越控除」と「損益通算」を利用して損失を取り戻すことが可能になります。
たとえば、特定口座で株取引による損失が出ても、別の口座や投資信託の売買で利益が出ている場合に、その利益や配当金から損失を差し引く「損益通算」を行うことで、所得税を軽減できます。
さらに、全ての口座で損益通算を行っても利益がマイナスになった場合には、その損失を翌年から3年間にわたって、利益や配当利益と損益通算することが可能です。これを「繰越控除」といいます。
「繰越控除」が認められるのは、あくまでも「損益通算」の対象となる金融商品に限られますので、注意が必要ですね。
少額所得の非課税枠
配当所得や利子所得には、年間20万円までの非課税枠があります。配当金等を「総合課税」で申告してトクをするのは、源泉徴収されている税金と10%の配当控除があるためですが、税率の高い高額所得者が申告すると、源泉徴収される以上に税率が上がってしまい、損をしてしまうので注意が必要です。また、配当金等は「総合課税」に代えて「申告分離課税」を選択した場合には、10%の配当控除はありません。
一方、給与収入2,000万円以下など年末調整で所得税の納税が完結する給与所得者や、シニア世代などの公的年金等の収入が400万円以下の年金受給者であれば、それ以外の所得20万円以下については確定申告不要となっています。
その他、株取引で利益が出た場合でも、その利益が48万円以下ならば、確定申告により還付を受けられる可能性があります。例えば、他の収入がなく専業主婦である場合、所得税や住民税の計算時に一律で差し引かれる基礎控除(48万円)を譲渡所得から差し引くことが可能です。その結果、課税所得は0円となり、確定申告を行えば税金が戻ってきます。(特定口座で源泉徴収アリの場合)
※基礎控除の額は以前は38万円でしたが、改正により48万円になりました。
シニア世代には、ネット証券口座を開設するのも大変です。ここでは、少しでも節税対策になるものを考えてみました。やはり、「特定口座」で「源泉徴収アリ」が確定申告の必要もなく、脱税の心配がいらないのは確かですね。
最後に
将来的な経済的安定を確保するためには、シニア層にとって重要な課題がいくつかあります。その中でも特に重要なのが、適切な投資戦略の選択と、その戦略が税金にどのように影響するかについての計画を立てることです。投資戦略は、個々の経済状況やリスク許容度、期待リターンなどによって異なるため、自分に最適なものを選ぶことが必要です。
これらの投資戦略が税金にどのように影響するかを理解し、その影響を最小限に抑えるための効率的な税務計画も重要な要素となります。適切に理解し適用することで、税後のリターンを最大化し、経済的安全を強化することが可能です。しかし、税法は複雑であり、理解が不十分な場合も多いと考えられますので、信頼のおける税理士に相談することをおすすめします。
最後に、成功する金融管理においては、お金を稼ぐことだけでなく、それを効果的に管理し、保持することが重要です。お金を効果的に管理し、必要なときに必要なだけ利用できるようにすることで、経済的な安定を実現し、安心した生活を送ることができます。これらの要素を忘れずに、しっかりと計画を立てていきましょう。
なお、この他にも不動産投資に関する税金などがありますが、現物の不動産投資には多種多様な税金がかかるため、別途機会を設けたいと考えています。
【 税金関連参考サイト 】