資産運用(IR情報編)

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今回は、資金運用における企業業績の分析手法を考察します。企業業績の評価には一般的に株価の動向が重要な指標となります。業績が好調な時は株価もそれに伴い上昇します。しかし、リーマンショックやコロナ、戦争などの世界情勢や、各国の金融・経済政策により、株価の乱高下が起こることもあります。それでも、長期的には業績の良い企業は株価や配当に反映されます。

企業のIR情報は、企業の決算内容や経営方針、事業戦略などの投資に役立つ貴重な情報が具体的に明記されています。こうした企業の決算内容や財務状況などを理解することは、投資判断を行う上で重要です。そのためには、財務3表と、自己資本利益率(ROE)や総資産利益率(ROA)などの主要な財務指標の分析が効果的です。この記事では、これらの分析方法とその重要性を説明します。

株価を評価する指標として、PERPBRが有名です。しかし近年は、これらを単独の基準とするのではなく、株価と企業価値のバランスやその推移を考慮し、テクニカル分析など他の材料と組み合わせるのが主流です。日本企業ではPBRが1倍を下回る企業が多く、政府も企業価値を高め、純資産に見合った株価水準になるよう対策を進めています。(PBR1倍は株価=資産価値となり、PBRが1倍未満の場合、株価は割安とされます。)

シニア世代の中には、この内容を少し難しく感じる方もいるかもしれませんね。しかし、企業業績を分析・評価するうえでは、財務3表などの理解が必要となります。商業簿記の3級ないし2級があると理解が進みますよ。

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財務3表

財務3表とは、貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書のことを指します。企業業績を評価する際には、財務3表と呼ばれる、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つの財務諸表を理解することが大切です。

諸表構成
  • 貸借対照表(BS)は、企業の財政状態を把握するための表です。資産、負債、純資産の3つの項目で構成されています。資産は、企業が保有する財産です。負債は、企業が他人に負っている借金です。純資産は、資産から負債を引いたものです。
  • 損益計算書(PL)は、企業の1年間の収益と費用をまとめた表です。この表は売上高、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、そして当期純利益の5つの項目で構成されています。売上高は商品やサービスの収益を示し、営業利益は売上高から原価と経費を引いた額です。経常利益は営業利益から非営業収支を引いた額で、税引前当期純利益は経常利益から特別損益を引いたものです。最後に、当期純利益は税引前当期純利益から法人税等を引いたものとなります。
  • キャッシュ・フロー計算書(CF)は、企業の1年間の現金の収支をまとめた表で、営業活動、投資活動、財務活動から生じたキャッシュ・フローの3つの項目で構成されています。キャッシュフローの把握のメリットは、資金不足になっていないか的確に把握できることです。
重要ポイント
  • 財務三表は互いに関連していますので、単一の書類ではなく全体を分析することが重要です。損益計算書の利益とキャッシュフロー計算書のキャッシュフローの違いを確認し、貸借対照表の資産と負債の変動原因を探ることで、企業の経営状況を深く理解できます。
  • 財務三表の分析では、単年度のデータだけでなく、10年程度の決算データの比較が有効です。売上高、利益、資産、負債、キャッシュフローなどの絶対値だけでなく、増減率や構成比などの相対値を見ることで、企業の動向や傾向を把握できます。さらに、同業他社や業界平均との比較を参考にすることで、企業の強みや弱みを客観的に評価できます。
  • 営業キャッシュフロー比率やフリーキャッシュフローは、企業のキャッシュ生成能力や成長余力を示す指標で、キャッシュフロー計算書から求めることができます。

最近では、チャットGTP等のAIを活用した分析を行うことも可能なので、自身の分析結果と照合するとより精度の高い評価が可能になるかもしれませんね。

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ROEとROA

ROE(自己資本利益率)

ROEは、「当期純利益÷自己資本×100」で算出されます。これは、自己資本に対する当期純利益の割合を示し、企業の財務パフォーマンスを測る指標となります。

ROEは企業が株主の投資からどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。ROEが高いということは、投資をより効率的に利益に変えていることを意味します。ただし、業種によってROEの値は大きく異なるため、同業種の企業間で比較することが重要となります。日本の企業のROEは米国企業に比べて低い傾向にあり、経済産業省主催のプロジェクトで伊藤邦雄氏が座長を務めた伊東レポートによると、ROEの目標水準は8%以上とされています。

ROA(総資産利益率)

ROAは、「当期純利益÷総資産×100」で算出されます。これは、企業が資産をどの程度効果的に利益に変えているかを示す別の財務指標です。

ROAが高いということは、より良い資産の利用効率を示します。一般的に、ROAが5%以上であれば優良企業とされています。しかし、有意義な分析のためには、同業種内での比較が必要です。

財務三表には、さまざまな経営指標を算出するためのデータが含まれています。ROEやROAは企業の収益性や効率性を示す指標で、これらは損益計算書と貸借対照表から求めることができます。また、自己資本比率や流動比率といった企業の財務安定性や支払い能力を示す指標も、貸借対照表から算出できますね。

企業業績の分析・評価

ROEとROAの違いは、分母に用いる資産の範囲です。ROEは自己資本に基づきますが、ROAは自己資本と他人資本(負債)を合計した総資産に基づきます。自己資本には返済不要の資産、出資金や蓄積された利益などが含まれ、他人資本には返済が必要な資産、借入金などが含まれます。

ROEとROAは、どちらも高ければ高いほど利益を効率的に生み出せているといえますが、それぞれの意味するところが異なります。ROEは株主から見た収益性や効率性を示し、株主は自己資本に対する利益を重視します。一方、ROAは経営者や取引先、金融機関から見た収益性や安全性を示し、負債の多さや返済能力なども考慮されます。

ROEとROAを用いて企業分析を行うことで、経営の状況を多角的に把握できます。例えば、ROEが高くROAが低い場合は、負債が多く経営リスクが高い可能性があります。逆に、ROEが低くROAが高い場合は、負債が少なく安定していますが、他人資本を活用していない可能性があります。ROEとROAの平均値や目安は業種により異なるため、同業他社との比較も参考にしましょう。

ROEとROAは、企業の経営効率を評価する重要な指標ですが、その評価対象が異なります。ROEは自己資本の効率性、ROAは総資産の効率性を評価します。したがって、ROEが高い企業は成長性が高いと考えられ、一方、ROAが高い企業は収益性が高いと考えられています。

最後に

財務3表と主要な指標であるROEROAの分析を行うことは、企業の財務健全性と運営効率についての貴重な洞察を提供します。これらは、投資家が企業の資産と自己資本を利益を生み出すためにどのように使用しているかを理解することで、情報に基づいた決定をすることを可能にします。ただし、これらの分析は常に業界の同業他社と比較して行うべきで、企業のパフォーマンスを総合的に理解するためには必須です。

貸借対照表は、特定の時点での企業の資産、負債、株主資本のありのまま状態を提供します。これは企業が所有し、負っているもの、そして株主が投資したものを示しています。

一方、損益計算書は、企業の収益、コスト、利益あるいは損失を一定期間にわたって強調します。これは企業が運営をどの程度うまく管理しているかの概観を提供します。

最後に、キャッシュフロー計算書は、貸借対照表と損益計算書の変動が現金及び現金同等物にどのように影響するかを示します。これは企業が現金をどのように調達し、それをどのように使っているかを、運営活動、投資活動、そして財務活動からの活動に分けて明らかにします。

今回は、個別企業への株投資に必要な企業業績の分析・評価方法について説明しました。しかし、シルバー世代の中には、企業のIR情報などは全く必要とせず、投資信託、インデックス投資、ロボアドバイザー投資などの独自の資金運用を行っている方も多いでしょう。実際、こうした投資法で成果を上げている方も多いのも事実です。

投資方法は千差万別であり、自分自身に最適な投資方法を見つけることが最も大切ですね。

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【 参考資料

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