健康生活ガイド(舌下免疫療法編)

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近年、花粉症に悩むシニア世代が顕著に増加しており、症状の重症度や長期化により、多くの方が効果的な治療法を求めています。しかし、注目を集めている舌下免疫療法では、多くの医療機関が65歳以上の高齢者を治療の対象外としています。これは、年齢による治療効果と安全性を考慮した判断によるものです。

舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を適切に調整した量で舌下に定期的に投与し、体を徐々にアレルゲンに慣らすことでアレルギー反応を緩和する革新的な治療法です。舌下免疫療法の治療法などについては、このブログでも詳しく紹介しています。

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シニア世代の方々の中には、加齢に伴って自然とアレルギー症状が和らいでいく例も見られますが、その一方で、長年にわたって重度の症状に苦しみ続けている方も決して少なくありません。症状の重さや生活への影響は個人差が大きく、一概に年齢だけで判断することは難しい状況です。

本記事では、65歳以上の高齢者が舌下免疫療法の対象外となることが多い理由について、医学的な観点や安全性の視点から、その背景にある様々な要因を考察したいと思います。

効果が期待しにくい理由

免疫機能の低下

一般的に、高齢になると免疫機能が低下する傾向があります。舌下免疫療法は、アレルゲンを少量ずつ投与することで免疫システムを慣らし、アレルギー反応を弱める治療法ですが、免疫機能が十分に機能しない場合、十分な治療効果が得られない可能性があります。

症状の自然な軽減

高齢になるにつれて、アレルギー症状が自然に軽くなる方もいます。そのため、長期間の治療が必要な舌下免疫療法よりも、症状が出た際に薬物療法を行う方が負担が少ないと判断されることがあります。

私たち夫婦は、二人とも花粉症でかなり長い間花粉症に悩まされてきました。この治療法が最近ではよく知られるようになってきましたが、アレルギー症状も次第に良くなってきていることや年齢的なことも考え、断念した経緯がありますね。

副作用のリスク

  • 合併症の可能性: 高齢者は、複数の慢性疾患を抱えている場合が多く、舌下免疫療法の薬剤や治療過程が既存の疾患に影響を与える、または相互作用を起こす可能性があります。
  • 生理機能の低下: 高齢になると、肝臓や腎臓などの生理機能が低下している場合があり、薬剤の代謝や排泄に影響が出る可能性があります。これにより、副作用が強く出たり、予期せぬ副作用が起こるリスクが高まることが懸念されます。
  • 臨床試験データの不足: 舌下免疫療法の臨床試験は、主に比較的若い年齢層を対象に行われてきたものが多く、高齢者における有効性や安全性に関する十分なデータが蓄積されていない場合があります。

高齢者への舌下免疫療法の効果や副作用のリスクを考えるとこの治療を避ける医療機関が多いのも事実です。しかし、最近の高齢者は元気な方も多いので、この治療法も効果が期待できると考えられていますね。

服薬の確実性

  • 複数の薬剤服用: 高齢者は、他の疾患で複数の薬剤を服用していることが多く、舌下免疫療法の薬の服用を忘れたり、他の薬との飲み間違いが生じる可能性があります。舌下免疫療法は、毎日継続して行うことが重要であるため、服薬の確実性が低い場合は治療効果が得られにくいと考えられます。
  • 理解力や記憶力の低下: 加齢に伴い、理解力や記憶力が低下することがあり、舌下免疫療法の正しい服用方法や注意事項を理解・記憶することが難しい場合があります。
  • 治療期間の長さ: 舌下免疫療法は、効果が現れるまでに数ヶ月から1年以上かかり、通常3~5年の継続が必要です。高齢者にとって、この長期間の治療が負担となる場合があります。

この治療法は、効果が現れるまでに長期間かかる場合が多いですね。通常5年程度かかる場合も多く、高齢者には継続するのが難しいのがネックになります。

医師の慎重な判断

  • エビデンスに基づいた診療: 医師は、現時点での科学的根拠(エビデンス)に基づいて診療を行います。高齢者における舌下免疫療法の有効性や安全性に関する十分なエビデンスがないため、より慎重な判断をする傾向があります。
  • 個別評価の重要性: 上記の理由から、高齢者に対する舌下免疫療法の適応は、個々の患者さんの健康状態、合併症の有無、内服薬、理解力、通院状況などを総合的に評価した上で慎重に判断されるべきです。

これらの理由から、多くの病院や医院では、65歳以上の高齢者を舌下免疫療法の対象外とするか、あるいは慎重な適応判断を行っていると考えられます。

おわりに

舌下免疫療法は、アレルギー体質を根本から改善できる可能性のある画期的な治療法として注目を集めています。この治療法では、アレルギー反応を引き起こす物質に対する体の過剰反応を段階的に抑制し、長期的な症状改善を目指します。

シニア世代では、加齢に伴いアレルギー症状が自然に軽減することが臨床的に確認されています。また、免疫機能や代謝機能には個人差が大きいという特徴があります。そのため、3〜5年の継続治療を要する舌下免疫療法よりも、症状出現時の適切な薬物療法の方が、身体的・精神的負担が少なく、より安全で効果的な選択肢となることがあります。

治療法は、患者さん一人一人の状況を考慮し、慎重に選択する必要があります。全身状態が良好で、アレルギー症状が強く日常生活に支障がある場合には、65歳以上の方でも医師の判断により舌下免疫療法が検討されることもあります。

近年、高齢者の舌下免疫療法に関する研究は着実に進展しており、今後、適応範囲が見直される可能性があります。65歳以上で舌下免疫療法を検討される方は、まず専門医に相談し、体調や既往歴、服用中の薬剤との相互作用、さらには治療に伴うリスクとベネフィットについて、詳しい説明を受けることが重要です。

花粉症は、症状が重く出る人はとても辛いですね。薬である程度症状が抑えらればいいですが、どうしても薬では効かない場合には、65歳以上の方でも舌下免疫療法は選択肢の一つになると思います。

《 参考情報

特集:最新エビデンスと使い方のコツが身につく 舌下免疫療法Q&A|Web医事新報|日本医事新報社
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