このガイドでは、アクティブシニア世代を中心とした日々の健康生活をサポートするための貴重な情報を継続的に発信してまいりました。特に、健康寿命の延伸に直接関わる栄養バランスの取れた食事や適切な運動方法、さらには質の高い睡眠の確保など、科学的根拠に基づいた実践的な健康情報の提供に力を注いでまいりました。

このブログを立ち上げた頃はまだ60代後半でしたが、現在は70代に足を踏み入れ、自分自身の健康管理により一層注意を払うようになっています。
今のところ大きな健康上の問題はないものの、加齢に伴う体力や筋力の低下、免疫機能の衰え、精神的活力の減退などによって、さまざまな感染症のほか、がん、心身疾患などに罹患するリスクが徐々に高まっていくことは避けられない現実として認識しています。
そこで今回からは、私自身が日々の健康維持・増進のために特に力を入れている具体的な取り組みについて、実体験に基づいた効果や感想を交えながら紹介していきます。このシリーズの第1回目として、毎日欠かさず実践している散歩(ウォーキング)の効果的な方法その具体的な効果について、各種調査結果も交えながら紹介していきたいと思います。
鎌田式インターバル速歩の実践
ウォーキングは手軽に始められる運動ですが、より効果を高めるにはスピードが重要です。また、認知症予防のためには歩幅を広げることも推奨されています。3分間、歩幅を広げて速歩きし、その後3分間はゆっくり歩く。このサイクルを繰り返すのがおすすめです。
加齢とともに、歩幅が狭くなり速度が遅くなる傾向にあります。女性はとくに、70代以降は歩幅が狭くなる傾向がありますので、意識して広げてみましょう。
- いつもの歩幅より10センチほど広げて速く歩きます。ももの内側が軽くストレッチされる感覚を意識しましょう。
- 呼吸を整えながらゆっくり歩きます。鼻から吸って口からゆっくり吐き、腹式呼吸を心がけましょう。
鎌田式では、「速歩き3分+ゆっくり歩き3分」を2セット行い、最後に速歩き3分で締めくくります。合計15分を目標にしています。ただし、3分はあくまで目安です。時間に余裕がないときは1~2分ずつでもよく、背筋を伸ばし、視線は前方に保ちながら、歩幅を広めにとり、かかとから着地するような歩き方が大切だとしています。

私はこの方法を70代から意識して実践しています。ただし、明確に「速歩き3分+ゆっくり歩き3分」を2セット行っているわけではありません。その時の体調や状況に合わせて適宜変更しています。
具体的な効果
認知症予防効果
国立環境研究所の調査によると、歩幅が狭い人は認知機能低下リスクが3倍以上高くなります。これは歩行と脳機能の関連を示す重要な発見です。歩幅を広くすることで、下半身の筋肉(大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋など)が鍛えられるだけでなく、脳内血流が促進され、海馬を含む認知機能関連領域が活性化し、認知症予防に役立つとされています。

この歩行は、筋肉への適度な負荷によって筋肉量の維持・増加が促され、代謝機能の向上や若々しさの維持にも効果があるそうです。
効果をさらに高めるには、歩きながら「しりとり」「計算」「逆唱」などの認知課題を行うデュアルタスク訓練も効果的です。身体と脳を同時に使うことで、脳領域間のネットワークが強化され、認知予備力(脳の代替経路形成能力)が向上します。
MCI(軽度認知障害)の早期治療と予防アプローチ
オレゴン健康科学大学の研究によると、MCI患者は健常者と比べ、歩行速度が年に1秒あたり0.01秒ずつ低下します。注目すべきは、この低下がMCI診断の約12年前から始まることで、歩行機能と認知機能の密接な関連を示唆しています。定期的な速歩を含む運動習慣は、MCIの進行を遅らせ、症状改善に効果的と複数の研究が示しています。
2023年12月に国内承認されたレカネマブは、アルツハイマー病の原因物質アミロイドβを標的とした抗体医薬品で、アルツハイマー型MCIの進行抑制に効果があります。この治療薬は早期治療として注目され、運動療法との併用でさらなる効果向上が期待されています。

サルコペニアの予防
筋肉は年齢とともに確実に減少していきます。筋肉量は20代でピークを迎え、30代から1年に1%ずつ減少し、50代以降は年に2%減少します。70歳を過ぎると、ピーク時の半分近くまで減ってしまいます。健康寿命に悪影響を与えるサルコペニアがとても心配になります。


サルコペニアが進行すると、歩行や立ち上がりなどの基本的な日常動作が困難になります。現在、高齢者の15%がサルコペニアに該当し、80代では約60%にまで上昇するとされています。
このため、筋肉を増やすための運動は必須です。しかし、ウォーキングだけでは「貯筋」はできません。ここで重要なのがインターバル速歩で出される「マイオカイン」というホルモンです。マイオカインは筋肉だけでなく、全身のさまざまな臓器に作用し、脂肪燃焼や血圧・血糖値の改善、認知症リスクの低下にも効果があります。


私はインターバル速歩に加え、スクワットやストレッチも日常的に行っています。特にお風呂上がりには下半身強化のため、スクワットを1日20回×3セット実施していますね。

最後に
日本ウオーキング協会によると、1日1万歩歩けば医療費の抑制効果が高まり、1週間で98円分の経済効果があるそうです。ウォーキングは有酸素運動ですから、心肺機能も強化され、筋肉も鍛えられる、いいことづくしです。

しかし、たとえ1万歩を毎日歩いても、無理をしてひざ痛や腰痛が起きてしまったら、かえって治療費がかかってしまいます。だから絶対に無理は禁物です。
鎌田實医師によると、一般的に60歳以上なら6,000~8,000歩、70歳以上なら4,000~6,000歩、75歳を過ぎたら3,000歩くらい歩ければ効果があるそうです。ウォーキングをすると快感ホルモンが分泌されて気持ちよくなるため、自分自身の体力に応じて、たくさん歩いても問題はないとされています。
ここで重要なのがインターバル速歩でマイオカインを刺激することです。マイオカインは筋肉を鍛えたり動かしたりすることで分泌される物質で、600種類以上が確認されています。このホルモンは、脂肪燃焼や血圧・血糖値の改善、認知症リスクの低下に効果があります。

特に最近注目されているのが大腸がんの予防効果です。マイオカインは前がん細胞に働きかけ、大腸がんの発生を抑制することがわかってきました。
様々な効果があるインターバル速歩を継続することで、筋肉を鍛えながら健康な長寿社会を迎えましょう。
《 参考情報 》