女優の中山美穂が、6日に54歳で亡くなられました。8日、死因が入浴中の不慮の事故によるものと判明し、検視の結果、事件性はないことも確認されました。公表された情報から、浴槽内での(1)深い眠り(2)熱中症(3)ヒートショックなどの可能性が指摘されています。
(1)深い眠りを誘発する主な要因として、<1>疲労<2>医薬品の服用<3>飲酒が挙げられます。顔が湯につかっても反応できず、命を落とすケースも報告されています。(2)熱中症は、高温の湯に長時間つかることで脱水状態となり、意識を失う可能性があります。(3)ヒートショックについては、検視で心筋梗塞や脳卒中の所見がないこと、また50代前半の女性であることから、可能性は低いと考えられています。

中山美穂さんは、シニア世代の芸能人を代表する方でした。突然の訃報を聞き、とても驚き、深い悲しみを感じています。心からご冥福をお祈りします。
消費者庁の統計によると、2019年の浴槽内での死亡者数は4,900人に達し、交通事故死の2,508人の約2倍、2008年と比べて約1.5倍に増加しています。今回の事故の詳しい状況は明らかになっていませんが、入浴には多くのリスクが潜んでいます。
本記事では、シニア世代から急増するヒートショックについて考察します。ヒートショックとは、暖かい室内から急に寒い場所へ移動した際に、血圧が急激に変化し、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす恐れのある状態を指します。特に冬場、暖かい浴室から寒い脱衣所へ移動する際に起こりやすく、高齢者や心臓病、高血圧の人などは注意が必要です。
原因と仕組み
ヒートショックは、急激な温度変化が血管に負担をかけ、体温調節機能を乱すことで発生します。特に高齢者や持病のある方は体の適応能力が低下しているため、環境の変化に対して敏感な反応を示します。以下に、主な原因を詳しく説明します。
- 急激な温度変化による血管への影響: 温度差により、血管が急激に収縮して血圧が上昇し、体に大きな負担がかかります。特に冬場は、浴室と脱衣所の温度差が大きく、このような状態が起こりやすくなります。
- 血圧変動に対する身体の脆弱性: 高血圧や低血圧の方、心臓病をお持ちの方は、普段から血圧のコントロールが難しい状態にあります。そのため、急激な温度変化による血圧の変動に特に敏感で、ヒートショックのリスクが高まります。
- 脱水状態がもたらす血液の変化: 体が脱水状態になると、血液の粘度が上昇し、血液が濃くなります。この状態では血液の循環が悪化し、温度変化に対する体の適応能力が低下するため、ヒートショックの発生リスクが増加します。
- 飲酒による血管機能への影響: アルコールには血管を拡張させる作用があり、血圧を低下させます。この状態で温度変化にさらされると、血管の収縮・拡張機能が正常に働かず、血圧調整が困難になり、ヒートショックを引き起こす可能性が高まります。
【参考資料】 出所:東京都健康長寿医療センター研究所の2014年の調査
症状
ヒートショックが発生した場合、身体にさまざまな危険な症状が現れます。早期発見と対処が重要となるため、以下の症状に注意が必要です。
- めまいや立ちくらみ(急激な血圧変動による症状)
- 動悸や不整脈(心臓への負担による症状)
- 意識障害や失神(脳への血流低下による症状)
- 吐き気や冷や汗(自律神経の乱れによる症状)
- 呼吸困難や息切れ(循環器系への負担による症状)
予防法
ヒートショックは、特に高齢者の健康に深刻なリスクをもたらします。そのため、予防対策の徹底が不可欠です。急激な温度変化から体を守り、安全な生活環境を整えるために、以下の具体的な予防策を実践していきましょう。
浴室と脱衣所の温度差を少なくする
- 浴室や脱衣所に暖房器具を設置する
- 入浴前に浴室を暖めておく
- 浴室のドアを開けておく
お風呂の温度を適切にする
- お湯の温度は41℃以下に保つ
- 長湯を避ける
- 入浴時間は10分以内を目安とする
入浴前の準備
- 入浴前に水分を補給する
- 食後すぐの入浴を控える
- 飲酒後の入浴は控える
浴室での注意点
- ゆっくりと浴槽につかる
- 浴槽からはゆっくりと立ち上がる
- 手足をマッサージする
その他
- 定期的な血圧測定や心拍数などを計測する
- 高血圧や心臓病の人は医師の指示に従う
- 暖かい服装を心がける

これらのヒートショック予防策は、寒い季節の入浴時には必ず実施するよう心掛けています。特に浴室と脱衣所の温度差を小さくすることと、適切な湯温の管理を徹底するようにしていますね。
発生時の緊急対処法
- すぐに暖かい場所に移動する: 速やかに暖かい部屋へ移動し、体を横たえて安静にしてください。このとき、急な動きは避け、ゆっくりと行動することが重要です。必要に応じて毛布などで体を保温してください。
- 救急車を呼ぶ: 意識を失う、呼吸が苦しい、激しいめまいや胸痛がある場合は、直ちに救急車(119番)を呼んでください。その際、ヒートショックの可能性があることを必ず伝えてください。

ヒートショックは心筋梗塞や脳卒中を引き起こす可能性があり、緊急性が高いため、躊躇せずに一刻も早く救急車を呼ぶ必要があります。
リスク要因と危険性の高い方々
シニア世代、特に70歳以上の方で、以下の疾病や状態がある場合は、ヒートショックのリスクが著しく高まります。これらの状態は体温調節機能や血圧調整能力に影響を与えるため、特別な注意が必要です。
- 高血圧の人:血圧の急激な変動に特に敏感で、温度差の影響を受けやすい状態にあります
- 心臓病の人:心臓への負担が大きく、温度変化によるストレスが重大な影響を及ぼすことがあります
- 糖尿病の人:血管機能や神経系への影響により、体温調節機能が低下しています
- 脳血管疾患の人:血管の弾力性が低下し、急激な温度変化への適応が困難です
- 低体温症になりやすい人:体温調節機能が低下し、温度変化への抵抗力が弱くなっています
まとめ
ヒートショックは、冬場に特に注意が必要な深刻な健康上の課題です。シニア世代では、加齢による身体機能の変化により発生リスクが著しく高まります。急激な温度変化が血圧を大きく変動させ、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な症状を引き起こす可能性があります。最悪の場合、生命に関わる事態に発展する危険性があります。
ただし、適切な予防対策を日常的に実施することで、このリスクを大きく減らすことができます。冬季は特に、浴室と脱衣所の温度差を最小限に抑えることが重要です。入浴時は急激な温度変化を避け、体温をゆっくりと上げることを心がけましょう。

寒い時期は、つい長湯をしがちですが、できるだけ10分以内を目安にしましょう。また、入浴前の水分補給も忘れずに行いましょう。
また、入浴前の水分補給や、各部屋の適切な温度管理といった基本的な予防策も欠かせません。これらの予防策はシンプルですが、ヒートショック予防に非常に効果的です。
もし、めまいや動悸、息切れなどのヒートショック症状が現れた場合は、様子見は避けてください。これらの症状を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。医療専門家による早期発見と適切な治療が、症状の重症化を防ぎ、確実な回復への道となります。日頃の予防と緊急時の適切な対応を心がけることで、安全で健康的な生活を送ることができます。
【 参考情報 】


