2024年10月1日より、我が国の医療制度に「選定療養費」制度が導入されました。この新制度は、増加し続ける医療費の適切な管理と、限られた医療資源の効率的な活用を目指す重要な取り組みです。また、持続可能な医療システムの構築への具体的な一歩としても注目されています。
本制度は、医療機関の適切な利用促進と医療費の持続可能性の確保を主な目的としています。世界でも類を見ないスピードで高齢化が進む日本において、この取り組みは医療提供体制の最適化を目指す中核的な施策となっています。
これまでは総合病院を気軽に受診できましたが、今後は風邪などの体調不良時には、まずかかりつけの医院やクリニックを受診し、必要に応じて紹介状を得てから総合病院を受診することなります。また、後発医薬品(ジェネリック医薬品)が標準的な処方となりますね。
この記事では、選定療養費制度の背景、メリット・デメリット、そして私たち患者への影響について詳しく説明します。
選定療養費とは?
選定療養費は、医療保険が原則として全額を支払わない医療サービスについて、患者が追加で負担する費用です。この制度は、医療サービスの質を保ちながら、医療資源を効率的に活用することを目指しています。
選定療養費は、以下の2つの場合に発生します。
後発医薬品ではなく、先発医薬品を選択した場合
- 医療上の必要性がないにもかかわらず、後発医薬品(ジェネリック医薬品)ではなく高価な先発医薬品(長期収載品)を希望する場合、その差額の4分の1を患者が負担します。
- ただし、医療上の理由がある場合や、後発医薬品が存在しない場合は、選定療養費は発生しません。
紹介状なしで総合病院(専門医療機関)を受診した場合
- かかりつけ医からの紹介状なしに専門医療機関を受診する場合、初診時や再診時に選定療養費が発生します。これは、許可病床200床以上の紹介受診重点医療機関を受診する際に、通常の医療費とは別に義務づけられた負担金です。
- 緊急の病気やけがの場合は、紹介状がなくても選定療養費は発生しません。
選定療養費導入の背景
- 医療費の増加: 高齢化の進展により、医療費は年々大幅に増加しています。特に、高度医療技術の発展と長寿化に伴い、一人当たりの医療費も上昇を続けています。
- 後発医薬品の利用促進: 先発医薬品と同等の効果を持ちながら価格を抑えられる後発医薬品への切り替えを促進することで、医療費の抑制を目指しています。
- 医療機関の機能分担: 初期治療はかかりつけ医が担当し、必要に応じて専門医へ紹介する仕組みを促進します。これにより、各医療機関の特性を活かした効率的な医療提供体制の構築を目指しています。
2024年は医療制度の大きな転換点となります。選定療養費の導入に加え、保険証のマイナ保険証への切り替え時期と重なることになりますね。
選定療養費のメリット・デメリット
メリット
- 医療費の抑制: 後発医薬品の利用促進と医療機関の機能分担を進めることにより、国全体の医療費の増加を効果的に抑制できます。これにより、持続可能な医療制度を維持することができます。
- 医療資源の効率的な活用: 専門医療機関への受診を適切に調整することで、限られた医療資源をより効率的に活用できます。その結果、専門的な治療を本当に必要とする患者さんに、適切なタイミングで医療を提供することが可能になります。
後発医薬品は、一般的にジェネリック医薬品と呼ばれています。これらを利用することで医療費を削減できます。さらに、総合病院と診療所・クリニックの役割分担を明確にすることで、総合病院の待ち時間短縮も期待できますね。
デメリット
- 患者の負担増加: 特に経済的に余裕のない患者さんにとって、選定療養費という追加の経済的負担が重要な課題となる可能性があります。これにより、医療へのアクセスに影響が出る恐れがあります。
- 医療機関の負担増加: 選定療養費に関する説明、徴収手続き、関連する事務作業の増加により、医療機関の業務負担が大きく増える可能性があります。これは医療現場の効率性を低下させる恐れがあります。
総合病院への通院にこだわり続けると、再診時ごとに3,000円以上の再診時選定療養費が加算され、経済的負担が大きく増えてしまいます。
新制度利用のための留意事項
- かかりつけ医を持つ: かかりつけ医を持つことで、病気の早期発見と予防が実現できます。また、専門的な治療が必要な場合、かかりつけ医が患者の状態を理解した上で適切な医療機関を紹介し、効率的な医療体制を整えることができます。
- 後発医薬品について医師に相談する: 後発医薬品の効果、安全性、価格差について医師に詳しく説明を求めましょう。現在服用している薬との相性や切り替えによる影響についても相談し、必要に応じて段階的な切り替えを検討することができます。
- 医療費について理解を深める: 選定療養費などの医療費制度を理解し、自分に適した医療機関を選択しましょう。医療費控除制度や助成制度についても情報を収集し、活用することで医療費負担を適切に管理できます。
おわりに
選定療養費の導入は、医療費の抑制や医療の質の向上につながることが期待されています。また、医療機関の機能分化を促進し、より効率的な医療提供体制の構築にも貢献します。しかし、患者さんにとっては、医療費の負担が増える可能性があることも事実です。このため、制度についての正しい理解と、適切な医療機関の選択が重要となります。
医療機関や薬局では、選定療養費について詳しく説明してくれるので、わからないことがあれば遠慮なく質問しましょう。また、定期的に自身の医療費の状況を確認し、必要に応じて医療費の管理方法を見直すことも大切です。
免責事項
本情報は、一般的な情報提供を目的としたものであり、医療に関する専門的なアドバイスではありません。個々の状況や条件によって適用される内容が異なる場合がありますので、医療に関するご質問は、必ず医師にご相談ください。
より詳しい情報を知りたい場合は、お住まいの地域の病床数200床以上の総合病院ホームページが参考になります。
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