加齢性難聴は、年齢を重ねることにより、耳の内部の有毛細胞が減少したり損傷したりすることで聴力が低下する症状を指します。一般的に、50歳を超えるシニア世代に入ると発症しやすく、年齢を重ねるほど進行する可能性が高まります。この事実を考慮に入れると、加齢性難聴は避けられない現象とも言えますが、適切なケアと予防策によりその進行を遅らせることが可能です。
私の父が加齢性難聴を患っていましたので、将来自分も同じ症状になる可能性を考慮に入れています。現在はそのような兆候は見られませんが、できるだけ早期から予防策を考え、対策を講じることが重要であると考えています。
今回は、このブログ記事で加齢性難聴に焦点を当て、その症状、原因、予防策、対策について紹介したいと思います。
症 状
加齢性難聴は、特に高音域の聴力低下を主な症状とする聴力障害です。これは、時間とともに自然に起こる現象で、特定の音域、特に高い音域の聴力が徐々に低下します。その結果、会話の聞き取りが難しくなることがよくあります。特に、会話中の子音の聞き取りが難しくなるという症状が顕著になることがあります。これは、子音が一般的に高い音域を含むためです。
また、テレビの音量を上げないと聞こえないという状況も、この種の聴力低下の典型的な症状です。さらに、加齢性難聴は耳鳴りやめまいを伴う場合もあります。これらの症状は、耳の中で鳴る音や、立っているときにふらつきを感じるというものです。
原 因
加齢性難聴の主な原因は内耳の有毛細胞の減少・損傷です。有毛細胞は音の振動を電気信号に変換する重要な役割を果たします。一般的に、年齢とともに有毛細胞は自然に減少します。さらに、騒音やストレス、喫煙、糖尿病などの生活習慣病も有毛細胞の減少・損傷を加速させる要因となります。以下に難聴の主な原因をあげます。
遺伝
遺伝的な要因が影響している可能性があります。遺伝性難聴は、基本的には両耳に起こる難聴で、40歳前後で発症し、60歳前後ではっきり難聴を自覚します。40歳前後で発症して進行が速い場合は、遺伝性難聴を疑って「臨床遺伝専門医」のいる医療機関を受診して検査を受けましょう。
騒音
長期間にわたって騒音にさらされ続けると、耳の中に存在する微細な毛細胞と呼ばれる構造が損傷しやすくなります。これらの毛細胞は、我々が周囲の音を聞くために極めて重要な役割を果たしており、一度損傷すると再生することは非常に難しくなります。
糖尿病
糖尿病は深刻な疾患で、血管（特に毛細血管）にダメージを与える可能性があります。この病気は身体のインスリン調整が不十分なときに発生し、その結果血糖値が上昇します。長期にわたる血糖値の高さは、毛細血管を含む血管に対して様々な損傷を引き起こす可能性があります。
高血圧
高血圧という病態は、体内の血液の流れが適切でない問題を引き起こす可能性があり、特に影響を受けやすいのが内耳です。内耳は聴覚や平衡感覚を司る重要な器官です。血流が悪くなると、これらの機能に影響を及ぼす可能性があります。
喫煙
喫煙は、体内の有毛細胞に直接悪影響を与える可能性があります。これらの細胞は非常に重要で、私たちの健康にとって重要な役割を果たしています。したがって、この潜在的なダメージは、健康に対する深刻な影響を及ぼす可能性があります。
肥満
肥満は多くの健康問題のリスクを増加させ、生活習慣病につながります。さらに、加齢性難聴の発症や進行にも影響を及ぼす可能性が高まります。つまり、肥満は耳の健康にも影響を与える可能性があるいうことです。
なお、病気としては滲出性中耳炎（しんしゅつせいちゅうじえん）があります。この病気は鼓膜の奥の中耳腔に液体が溜まる中耳炎です。通常液体は耳管を通じて鼻へ排出されますが、耳管が悪いと液体が溜まり、難聴になります。鼓膜が癒着しやすくなるため、早期治療が重要です。
予 防
加齢性難聴を完全に予防することはできませんが、適切な生活習慣と健康管理により、その進行を遅らせることは可能です。健康的な食事、適度な運動、定期的な健康診断を行うことで、耳の健康を保ち、加齢性難聴の発症を遅らせることができます。以下に難聴の主な予防法をあげます。
騒音対策
騒音は私たちの聴覚に深刻なダメージを与える可能性があります。特に、耳の重要な部分である有毛細胞に大きな影響を及ぼすことがあります。有毛細胞が損傷すると、音を適切に捉える能力が低下する可能性があるため、イヤホンなどを使用する際は音量を適度に保つことが重要です。
生活習慣の改善
喫煙、不均衡な食生活、運動不足といった悪い生活習慣は、様々な生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、加齢性難聴の進行を早める可能性があります。これらのリスクを最小限に抑えるためには、バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙が不可欠です。
耳のケア
耳垢が蓄積すると、音の伝達路が塞がり、これが難聴を引き起こす可能性があります。これは、耳垢が音波の通り道を遮るためです。したがって、定期的な耳掃除は非常に重要です。耳掃除は、耳を清潔に保つことで、耳の健康を維持するのに基本的なステップです。
対 策
現在、加齢性難聴の治療法はまだ確立されていません。しかし、対策として聴力補助機器や補聴器の使用があります。これらの器具は、人々の日々の生活を豊かにするために設計され、聴力を補う能力があります。これにより、生活の質が大幅に向上し、コミュニケーションの困難さが減少する可能性があります。以下に難聴対策の主要な方法を紹介します。
聴力補助機器
聴力補助機器は、テレビやラジオなどのオーディオソースの音声を補聴器以上に大きな音で聴くための特別な機器です。これらは、音量を大幅に増幅し、ユーザーが聞き取りにくい音を明瞭に聴くことを可能にします。軽度から中等度の難聴の方々にとって、これらの補助機器は特に有用です。
補聴器
最近の補聴器は小型化が進み、デザインも洗練されてきました。さらに、性能ならびに装着感の向上も見られ、これにより、ユーザーはイヤホンのような感覚で音をより明確に理解することが可能になりました。
その他
難聴者に対し、顔を向けてゆっくりと大きな声で話すことで、コミュニケーションを円滑に進めることができます。多くのテレビ番組や映画には字幕や音声ガイドが付いているので、これを積極的に利用しましょう。
加齢性難聴に関する支援団体や情報提供機関が存在します。これらの団体を利用することで、必要な情報や支援を得られます。
最後に
加齢性難聴は、感覚系の中で老齢化の影響を強く受けるものであり、高齢者に最も一般的な感覚障害とされています。確固とした統計はないものの、65歳以上のシニア世代の人々の難聴有病率が急増していることが多くの研究報告で示されています。
加齢性難聴の症状は、音の高さや強さを認識するための高音域の聞き取りが最初に難しくなり、次第に全体的な聞こえが悪くなることが多いという特徴があります。これは、耳鳴り、人との会話で聞き返す回数の増加、テレビやラジオの音量を通常よりも大きくする必要など、日常生活のさまざまな状況で現れます。また、軽度の難聴になると、人の話が聞き取れないことがあります。これが原因で人との会話が臆病になり、その状況が続くと認知症に進行する可能性があるという研究報告があります。
加齢性難聴は、日常生活に重大な影響を及ぼし、高齢者の大きな悩みとなります。しかし、難聴の原因を理解し、予防法や対策を学び、それを実践することで、症状の改善や進行の遅延が可能となります。
加齢性難聴でお困りのシニアの皆様、そういった症状に悩まされている方々は、専門医である耳鼻咽喉科医に相談することを強くおすすめします。
【 参考情報 】
