花粉症が国民病と騒がれてからはや数十年が過ぎています。私自身もスギ花粉症の症状が現れ始めたのが40歳中ごろで、それから既に20年以上の歳月が流れたことになります。その長い期間、私はさまざまな対症療法に取り組んできました。具体的には、点眼薬や点鼻薬による局所療法から始め、内服薬による全身療法も行ってきました。
最近の私の状況は、症状は徐々に改善してきているものの、依然として完治はしていません。これは、花粉症の症状が根本的に解消されるまでには時間と長い治療が必要とされているためです。
そんな中、近年、私の関心を引いたのが舌下免疫療法という新たな治療法です。これは、スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の根本的な治療法として注目を集めている方法で、従来の薬物療法とは異なり、体質そのものを改善することを目指した画期的な治療法と言えます。この舌下免疫療法について、この機会に深く考察してみたいと思います。
舌下免疫療法の基本情報
この治療法は根治療法ですが、現在の完治率は約20%とされています。治療期間が長く、効果を感じるまでに時間がかかります。そのため、以下の基本情報を参考に、この治療を受けるかどうかを慎重に考える必要があります。
適正年齢
医療機関によって治療対象の年齢は異なりますが、一般的には5歳以上から高齢者までと設定しているところが多いです。これは、広範囲の年齢層に治療を提供するためです。しかし、一部の機関では、65歳以上のシニア世代は老化に伴う体の変化を考慮し、治療対象外としています。
また、日本アレルギー協会が提供する資料「的確な花粉症の治療のために」によれば、スギ花粉症に苦しむ12歳以上の人々は、年齢に関係なく治療を受けられると明記されています。これは、花粉症の症状を緩和し、生活の質を向上させるための重要なガイドラインとなっています。
私もこの治療法について検討しましたが、年齢や治療の成功率、完全治癒の可能性を鑑みると、少なくとも現時点ではこの治療法を受けることは適切ではないと考えていますね。
効 果
この治療を長い間継続して行うことで、以下の効果が期待されています。
- スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の患者に対して、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、涙目、目のかゆみなどの症状の改善が期待できます。
- 現在治療薬を服用している場合、その薬を減らしたり、やめたりすることも期待できます。
- 効果実感が早い方では服用開始から4~5か月後、遅くとも1年後には多くの方が効果を感じるといわれています。症状の改善だけでなく、完治も期待できます。
- 約70~80%の患者さんが花粉症の症状の緩和を感じる一方、約20%の方は効果を感じないこともあります。
副作用
この治療法は他の方法に比べて副作用が少ないとされていますが、一部の以下のような副作用をおこす能性があります。
- 口の中のかゆみや腫れが最も多くみられます。特に、薬の投与部位である舌の下が腫れる症状は、治療患者の約10%にみられるといわれています。
- 耳のかゆみや唇の腫れ、喉の刺激感や違和感、吐き気、頭痛などが起こる可能性があります。
- これらの副作用は治療薬の服用後30分以内に起こり、1~2か月ほど経過すると気にならなくなることが多いとされています。
その他ごくまれですが、アナフィラキシーショック(蕁麻疹や呼吸困難など)が起こる場合があります。初回の服用は基本的に医療機関で医師の監督の下に行われ、医師による緊急の対応が必要となりますね。
この治療を受ける前に
治療に先立ってまず行うべきことは、他の治療法との比較検討です。これにより、最も適した治療法を選択することができます。次に、潜在的な副作用のリスクをしっかりと理解しておくことが大切です。これは、治療の進行とともに予期しない問題を避けるためです。さらに、アレルギー原因物質を特定するために血液検査を行うことが不可欠です。これは、治療によって最大の効果を得るための重要なステップです。
最後に、これらの治療は一晩で結果が出るものではなく、治療期間が長いことを覚悟する必要があります。そのため、以下のような治療の流れや治療方法などを十分理解しておく必要があります。
なお、費用については、健康保険適用(3割負担)で、月額約5,000円~1万円程度ですが、舌下免疫療法の費用は、医療機関によって異なる場合があります。また、この治療法は、すべての医療機関が実施しているわけではありませんので、注意が必要です。
治療の流れ
- まずは、適切な医療機関を訪れて専門の医師に診察を受けます。この際、あなたの症状と全体的な健康状態を考慮して、舌下免疫療法が適応かどうかを医師が判断します。
- 医師によって舌下免疫療法が適応と判断された場合、次に治療薬が処方されます。この治療薬は、あなたの体質を改善し、花粉症の症状を和らげるためのものです。
- 処方された治療薬は、毎日自宅で服用することが求められます。治療期間は一般的に5年程度とされていますが、これは個々の症状や体調により異なる場合もあります。
- 治療を始めてからは、定期的に医療機関で経過観察を受けます。これにより医師はあなたの治療進行状況を把握し、必要に応じて治療計画を調整することができます。
治療方法
- 舌下免疫療法は、特定の治療薬を舌の下に置くという独特の方法を用います。この治療薬を舌の下に置き、一定の時間(通常は1分間)その位置を保持します。その後、舌の下に置いた治療薬を飲み込みます。このプロセスを1日1回、長期間継続的に行います。
- 舌下免疫療法の特徴的な点は、アレルゲンを微量しか含まない薬を使用することです。舌の下に置いた薬は、舌の下の粘膜から直接体内に吸収されます。薬を舌の下に置いてから1分間そのままにし、その後で飲み込みます。
- 飲み込んだ後の5分間は、飲食やうがいを避けることが推奨されます。これは、薬がしっかりと体内に吸収されることを確保するためです。この5分間は、飲食物によって薬が体内から排出されるのを防ぐために特に重要です。
この治療法は、スギ花粉症が重症な方でも、とても高い効果を発揮する場合もありますね。
最後に
舌下免疫療法は、花粉症の治療に革新的な手法として位置づけられています。従来の治療法とは大きく異なり、この新たな療法は、花粉症の根本的な治療へとつながる可能性を秘めています。初めてこの治療法を聞く人からすれば、治療期間が長いと感じるかもしれませんが、それは長期的な視点で見れば理解できるはずです。なぜなら、この治療法の最大の利点は、良くなれば毎日薬を飲む必要がなくなる点です。
舌下免疫療法は、一時的な症状の抑制だけでなく、体質改善と健康的な生活基盤の構築にも効果が期待できます。これは花粉症の患者にとって大切なポイントでしょう。しかし、治療を開始する前には十分な医師との相談が必要です。この革新的な治療法の利点と欠点を十分に理解し、自身にとって最適な選択をするには、慎重な考慮と情報収集が重要です。
シニア世代がこの治療法を選択することも間違いではないと考えています。現在、花粉症が重く、薬などの対症療法に効果を感じられない方もいます。そのような方は医師と相談し、この治療法を試す価値が高いと思います。効果があれば、生活の質を大きく改善する可能性がある治療法だと感じています。
【 参考資料 】