血管年齢を知って、健康長寿を目指そう!
私は長年、両親の介護を行い、介護施設や医療機関で多くの高齢者と接する機会がありました。その経験から、身体の衰えが年齢だけによるものではないことを強く感じました。妹の介護をする姉の姿や、100歳を超えても活動的な高齢者を見てきました。
最近の研究によれば、健康長寿は遺伝的要素よりも後天的な生活環境の影響が大きいとされています。つまり、日々の生活習慣の改善など自分自身の努力によって、健康寿命を延ばすことが可能であると言われています。
健康長寿を達成するためには、日常の生活習慣が重要です。この点について、健康長寿の指標となる「血管年齢」「腸内年齢」「骨年齢」に焦点を当てて考察してみたいと思います。
今回は、まず「血管年齢」について考察し、その改善方法についてシニアの方々を対象にした記事を作成する予定です。皆様がこのブログ記事を参考に、健康寿命を延ばし、充実した健康長寿を迎えられますよう願っています。
血管年齢とは何か
血管年齢という概念は、実際の年齢とは異なる考え方で、血管の柔軟性や硬さを基準として血管自体の年齢を表現しています。この血管年齢は、人間の加齢だけでなく、食生活の乱れや運動不足、心理的ストレスなど、さまざまな要因によって影響を受けます。
これらの要素が絡み合うことで、血管内部には「プラーク」という沈着物が形成されたり、血管そのものが硬化したりします。これが動脈硬化の状態で、この結果、血管年齢は徐々に老化していきます。
その一方で、加齢による血管年齢の老化は、ある程度は避けられない現象と言えます。しかし、興味深いことに、一度老化した血管も、食事内容の見直しや適度な運動といった生活習慣の改善によって、その老化を逆転させて「若返る」可能性があることが科学的に明らかになっています。これは、私たちの健康維持にとって非常に重要な知見と言えるでしょう。
血管年齢を測定する方法
この血管年齢は医療機関などで調べることが可能です。測定方法としては下記のようないくつかの選択肢がありますが、加速度脈拍検査は便利な方法で、指を挿入するだけですぐに結果が出ます。ただし、測定値の誤差が生じやすいという欠点があります。血管年齢や動脈硬化の状態をより正確に知りたい場合は、医療機関でのCAVIとABIの同時検査が推奨されます。
加速度脈波検査
心臓からの「拍動」は、「脈拍」として指先に伝わります。この指先の脈拍を「加速度脈波計」という装置で波形として捉え、そこから血管年齢を測定するのが加速度脈波検査です。人差し指をセンサーに入れることで、指先の脈の波形が記録され、その波形から加齢指数を算出し、血管年齢を推算します。なお、調剤薬局等にも設置されている場合があり、無料で測定できます。
私は調剤薬局で時折測定を行っていますが、結果が一定でないため、あくまでも参考程度に考えていますね。
脈波伝播速度検査(PWV)
PWV(Pulse wave velocity)は、心臓から送り出される脈波が血管を伝わる速度を測定し、血管年齢を推定する検査です。仰向けに寝た状態で両腕と両足首にセンサーを装着し、動脈壁を伝わる脈波の速度から血管年齢を推算します。
物理学的には、波は硬い物質を通過するときに速く進み、柔らかい物質を通過するときには遅く進みます。健康な人の血管は柔軟性があり、脈波は血管壁に吸収されて遅く伝わります。しかし、脈波の速度が速い場合は、血管が硬化して脈波が血管壁で吸収されない可能性があります。
ABI検査
この検査では、仰向けの状態で両腕と両足首の血圧を測定し、足首の収縮期血圧を上腕の収縮期血圧で割り、足の動脈の狭窄具合を推定します。ABIとはAnkle Brachial Pressure Index(足関節上腕血圧比)の略で、下肢動脈の狭窄や閉塞を示す指標です。
通常、足の血圧は腕の血圧よりも高く、標準値(0.9~1.3)を下回る場合、足への動脈の内径が狭窄している可能性があります。逆に、標準値を上回る場合は、血管壁が硬化している可能性があります。
CAVI検査
両腕・両足首の血圧と脈波を測定し、動脈の硬さを計算する検査をCAVI検査と呼びます。CAVIはCardio Ankle Vascular Index(心臓-足首血管指数)の略で、動脈の硬さを示す指標です。動脈は全身に血液を運ぶポンプの役割を果たします。
CAVI検査では、このポンプの内部の圧力(血圧)が変わったときの膨らみを観察し、ポンプの弾力性、つまり動脈の硬さを確認します。その結果、CAVIの数値が高ければ高いほど、動脈硬化が進行していることを示します。
改善するための生活習慣
血管年齢を改善するには、食生活、運動習慣、喫煙、睡眠など以下のような生活習慣を改善する必要があります。
食生活の改善
血管の内膜には、「内皮細胞」が存在し、これは血液をサラサラに保ち、有害物質が血管壁に侵入するのを防ぎます。内皮細胞の機能は食生活の改善によって回復するため、血管年齢の若返りにも寄与すると考えられています。
内皮細胞の新陳代謝を促進する青魚や、活性酸素を除去し動脈硬化を防ぐ抗酸化作用の高いトマト、カボチャなどの野菜類、大豆製品を積極的に摂取しましょう。さらに、コレステロールの吸収を抑える食物繊維が豊富な食品も推奨されます。食事の量は腹八分目に保ち、塩分やコレステロールの過剰摂取を避けることも重要です。
運動習慣をつける
血管の若返りには運動習慣が欠かせません。ウォーキングや水泳などの有酸素運動を行うと、体内で一酸化窒素の分泌量が増え、血管が拡張します。この一酸化窒素は血管をしなやかに保ち、動脈硬化を防ぐ効果があります。
また、ストレッチングも血管の若返りに効果的です。ストレッチを行うと筋肉が伸び、コラーゲンを生成する「線維芽細胞」が活性化します。この結果、柔軟なコラーゲンが生成され、血管がしなやかになると言われています。
禁煙や節酒に努める
タバコに含まれる成分、ニコチンは血管を収縮させ、一酸化窒素の分泌を抑制するという事実は、科学的研究により明らかにされています。一酸化窒素は血管を拡張し、血流を改善する効果があります。しかし、その分泌が抑制されると、血流が悪化し、血管の健康が損なわれる可能性があります。さらに、喫煙により体内で活性酸素が大量に発生し、これが細胞を攻撃し、血管の内皮細胞に損傷を与える可能性があります。
このため、喫煙者は健康を考慮に入れ、早期の禁煙が重要です。また、アルコールも血管に負担をかけるため、適度な飲酒が推奨されます。健康な血管を維持するためには、禁煙と適度な飲酒が必要です。
私は20代の頃、タバコとお酒が好きで、夜な夜な飲みに行っていました。しかし、30代になってからは、タバコをやめ、お酒も段階的に減らしました。今では、あまりお酒を飲まず、健康的な生活を続けていますね。
十分に睡眠をとる
成長ホルモンは深い睡眠の期間中に分泌され、血管の内皮細胞の修復と一酸化窒素の分泌力向上の効果があります。一酸化窒素は血流を改善し、血管を広げる働きがあります。従って、成長ホルモンの分泌は健康な血流と血管の維持に直接関わります。
しかし、睡眠不足になると、この成長ホルモンの分泌も低下します。これが長期化すると、血管の健康を維持するための重要なプロセスが正常に機能しなくなる可能性があります。そのため、睡眠が不足しがちな人は、睡眠時間を十分に確保することが重要です。健康的な生活を目指すためには、質の良い睡眠を十分に取ることが必要です。
最後に
健康長寿を目指すためには、食生活の改善、運動習慣の維持、喫煙の禁止、十分な睡眠が重要であるという事実を、当ブログの読者の皆さまには十分に理解いただいたかと思います。私自身は、これまでこのブログを通じて、健康生活を送るためのさまざまなアドバイスを発信してきました。これらのアドバイスを日々の生活に取り入れ、積み重ねることが、健康寿命を延ばし、結果的に健康長寿を実現する確かな方法だと信じています。
私自身、母の介護をしながら大学院に通い、「日本における健康寿命の延伸に関する調査研究」というテーマで修士論文を執筆し、「Best Paper Award」を受賞することができました。その研究では、主に統計データに基づく健康寿命の計量分析と運動の効果について検証しました。
その経験から、健康寿命や健康長寿に関心が高く、シニア世代が健康で充実した人生を送れるようなメッセージをこのブログで発信し続けることを目指しています。
皆さまが健康で長寿を目指す道のりに、このブログが少しでもお役に立てれば幸いです。
【参考情報】
- 厚生労働省:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-002.html
- 日本動脈硬化学会:https://www.j-athero.org/jp/jas_gl2022/
- 日本心臓財団:https://www.jhf.or.jp/publish/upload_images/Heart_No19.pdf