2025年は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる年です。総務省統計局によると、日本では約5人に1人が75歳以上という、かつて経験したことのない超高齢社会を迎えつつあります。
日本は高齢化社会に直面しており、健康的な老年期を過ごすためには、健康寿命を延ばすことがますます重要になっています。健康寿命を延ばすためには、高齢者にありがちな症状であるフレイル、サルコペニア、認知症などに対処する必要があります。これらの症状を抑制するための正しい対策を取ることで、健康寿命を延ばすことに繋がります。
本記事では、フレイル、サルコペニア、認知症の予防や対策などについて、分かりやすく解説します。これらの症状について知識を深め、正しい対策を講じることが、健康寿命を延ばすうえで大切であると考えています。
フレイルへの対応
フレイルとは、加齢とともにありがちな身体的、認知的な機能低下のことを指します。フレイルになると、身体機能が低下し、日常生活に支障をきたすことがあります。フレイルになる原因は、加齢、生活習慣の乱れ、栄養不足、運動不足、ストレスなどが挙げられます。フレイルに対する対策としては、以下のことが挙げられます。
- 運動を習慣化する:適度な運動は、身体機能の維持や改善に効果的です。ウォーキング、ジョギング、水泳、ヨガなど、自分に合った運動方法を選ぶことが大切です。
- 栄養バランスの良い食事を心がける:栄養バランスの良い食事を摂取することで、身体機能の維持や改善に役立ちます。特に、タンパク質やビタミンDの摂取が重要です。
- ストレスを適切に管理する:ストレスは、身体機能の低下につながることがあります。ストレスを適切に管理するためには、趣味やスポーツ、マインドフルネスなど、自分に合ったストレス解消方法を見つけることが必要です。
サルコペニアへの対応
サルコペニアとは、加齢による筋肉量の低下によって身体機能が低下する状態のことを指します。サルコペニアになると、転倒や骨折などのリスクが高まることがあります。サルコペニアになる原因は、加齢の他に、運動不足、栄養不足、ホルモンバランスの乱れなどが挙げられます。サルコペニアに対する対策としては、以下のことが挙げられます。
- 適度な筋トレを行う:筋肉を鍛えることで、筋肉量の低下を防ぐことができます。特に、ウエイトトレーニングやスクワット、腕立て伏せなどの筋力トレーニングが効果的です。
- タンパク質を摂取する:タンパク質は、筋肉の合成に必要な栄養素です。タンパク質の多い食品を摂取することで、筋肉量の低下を防ぐことができます。
- ビタミンDを摂取する:ビタミンDは、筋肉の機能を維持するために必要な栄養素です。ビタミンDが不足すると、筋肉の機能が低下することがあります。
なお、高齢になるにつれ、トイレの回数が増える傾向にあります。トイレに行く際に、階段などの段差等により転倒してしまう場合があり、これが骨折に繋がることがあります。これにより、軽度のフレイルやサルコペニアが悪化し、寝たきりの状態になる場合があるので、十分に注意しましょう。
また、シニア世代に多い糖尿病や前立腺肥大、肝・腎疾患などにならないよう血液検査などの定期健診を積極的に受けましょう!
認知症への対応
認知症とは、脳の機能が低下することによって、記憶力や判断力などが低下する状態のことを指します。認知症になる原因は、老化や遺伝、生活習慣の乱れなどが挙げられます。認知症に対する対策としては、以下のことが挙げられます。
- 脳トレを行う:脳トレは、認知症の予防に効果的です。パズルやクロスワード、数独などの脳トレが効果的です。ただし、脳トレは楽しくないとストレスになり、逆効果にもなりかねないので、注意が必要です。
- 適度な運動を行う:運動は、認知症の予防にも効果的です。ウォーキングやジョギング、水泳、ヨガなど、自分に合った運動方法を選ぶことが大切です。
- 歯周病ケアを行う:歯周病はアルツハイマー型認知症を悪化させる原因であり、歯周病菌がアミロイドβの脳内蓄積を促進することが分かっています。歯が抜けたり弱くなったりすると噛む行為が減り、認知症の発症リスクが高まることも考えられます。
- 社会的活動を行う:ソーシャルな活動は認知症の予防に効果的とされます。例えば、友人や家族と交流することやボランティア活動を行うことが挙げられます。しかし、合わない場合はストレスを感じることもあるので、自分に合った楽しめる活動を選ぶことが必要です。
最後に
健康寿命を延ばすためには、適度な運動、十分な睡眠、ストレスを適切に管理することが必要です。具体的には、ウォーキング、ジョギング、水泳、ヨガなど、自分に合った運動方法を選ぶことが大切です。また、良質な睡眠を確保するためには、睡眠環境の整備や睡眠のリズムを整えることが重要です。さらに、ストレスを適切に管理するためには、趣味やスポーツ、マインドフルネスなど、自分に合ったストレス解消方法を見つけることが必要です。
また、健康的な食事も健康寿命を延ばすために欠かせない要素です。バランスのとれた栄養価の高い食品を摂取することが重要で、野菜、果物、全粒穀物、低脂肪の肉や魚、種実類やオリーブオイルなどが含まれます。食材の選び方や調理方法にも注意が必要で、加熱調理は栄養素を壊してしまうことがあるため、蒸しや焼き、茹でなどの調理法を選ぶことが望ましいです。
運動や食事だけでなく、ストレスの管理も健康寿命を延ばすための重要な要素です。ストレスを感じた場合には、自分に合ったストレス解消方法を見つけることが重要です。
私は、20年以上にわたり両親の介護をしてきた経験があります。介護中は、終わりが見えないストレスに苦しみました。その間、自分自身が病気にならないように、定期健診をはじめ、運動、食事など自分の健康にはとても気を使っていました。その結果、今では30代や40代よりも健康的に過ごすことができています。血液検査の結果も良く、高めだった血圧も今では正常範囲を維持しています。これからも健康に留意しながら健康長寿を目指していきたいと考えています。
参考文献
- 沓澤 智子(2021)「サルコペニアとフレイル」 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 第29巻 第 3 号 359- 364
- 「認知症疾患診療ガイドライン 2017」 一般社団法人 日本神経学会
- 宮下充生(2014)「健康寿命を延ばす運動の科学」 明和出版
- 令和4年版高齢社会白書(全体版)健康 内閣府