健康生活ガイド(健康長寿編)で詳しく解説したように、最新の医学研究や生命科学の飛躍的な進歩により、私たちは健康長寿の新時代を迎えようとしています。これまでの常識を覆す革新的な発見や治療法の開発が相次ぎ、健康寿命の大幅な延伸が現実的な目標となってきています。この医学的進歩を背景に、人生100年時代における効果的な資金運用の重要性は、かつてないほど高まっています。

シニア世代では、自身の健康管理に加え、高齢化する親の介護や退職後の生活設計など、複数の重要な課題に直面します。特に50代での親の介護問題は深刻です。介護の負担は年々増大し、仕事との両立が困難となって介護離職を選択するケースも増えています。

私の場合、40代前半から介護が始まり、60代半ばまで継続することになりました。メンタル的に大変辛い時期も経験しましたね。
2025年は、団塊の世代全体が後期高齢者となる重要な転換点です。この社会変化を見据え、個人レベルでは健康寿命の延伸への取り組みと、それを支える堅実な資金計画の策定が不可欠です。
これらを踏まえ、本記事では、シニア世代が充実した人生100年時代を健やかに過ごすための具体策として、資金の効率的な運用と活用について、ライフステージに応じた3つの段階に分けて解説します。
退職までの運用(シニア世代 50-65歳まで)
50代から65歳までは、退職後の経済的安定と健康的な生活を確立する重要な時期です。この期間に生活設計を具体化し、適切な資産形成と健康管理を行うことで、充実したシニアライフの基盤を築くことができます。
- 中長期の個別株投資や長期の投資信託:50代~60代中盤のシニア世代には、優良企業への中長期の個別株投資や、市場全体の動きを捉える長期の投資信託(インデックス投資)が最適です。これらは長期的な資産形成に適した投資手法です。

さらに、投資リスクを効果的に管理するため、地域・業種・資産クラスなど、様々な観点での分散投資が重要です。投資先を適切に分散させることで、市場変動リスクを大幅に抑えることができますね。
- オンラインサービスの活用:PCやスマートフォンで取引や口座管理ができるオンラインサービスを活用することで、効率的な資産運用が可能です。金融機関が提供する情報サービスやリサーチツールも、投資判断の参考になります。
- 新NISA制度の活用:2024年1月に始まった新NISA制度は、非課税投資枠の拡大や制度の恒久化など、個人投資家に魅力的な特徴があります。この制度を最大限活用することで、効率的な長期投資と将来の資産形成が期待できます。
退職後の前期運用(シニア世代 65-80歳まで)
加齢に伴う認知・判断能力の変化は予測が困難です。そのため、保守的な資産計画では段階的な運用撤退を視野に入れ、柔軟に対応できる準備をしておくことが賢明です。特に認知機能の低下が見られ始めた場合は、早期に運用方針を見直すことが重要です。
- 資産運用を継続しながら一部を取り崩す:「使いながら運用する時代」として、現役時代に築いた資産運用を継続しつつ、必要に応じて計画的な取り崩しを行います。日々の生活費や趣味活動、予期せぬ支出にも対応できる、バランスの取れた資金計画を立てることをお勧めします。
- 個人の状況に合わせて判断する:資金運用の方針は、健康状態、家族構成、収入状況、リスク許容度など、様々な要因を総合的に考慮して決定します。状況の変化に応じて定期的な見直しと柔軟な調整を行うことが必要です。
- 資産管理ノートを作成する:いざという時に家族が混乱しないよう、資産運用の状況、管理方法、重要書類の保管場所、金融機関との取引内容などを詳しく記録したノートを作成し、定期的に更新することが大切です。このような準備により、将来の資産承継がスムーズに進められます。

健康管理に万全を期しても、不測の事態や急病による突然の死に備える必要があります。そのため、エンディングノートや資産管理ノートを早めに作成し、整理しておくことが重要ですね。
退職後の後期運用(シニア世代 80-100歳まで)
まだ元気なうちは、旅行やガーデニング、軽いスポーツなど、個人の興味に合った活動にお金を使うことも大切です。また、趣味のサークル活動や文化教室への参加など、生きがいを見出せる活動に適度な支出を行うことで、より豊かな生活を送ることができます。
- リスク資産を売却し、預金を取り崩す:「使うだけの時代」においては、すべてのリスク資産を売却し、20年間にわたって預金などの安全資産を計画的に取り崩して生活を送ります。この際、遺産形成と将来の医療・介護費用を見据えた長期的な資金管理が大切です。
- 定期預金などの現金比率を高める:80代以上のシニア世代には、安全性の高い国債のほか、定期預金などの現金比率を高めましょう。特に、急な出費に備えて、普通預金と定期預金をバランスよく保有し、必要に応じて柔軟に資金を引き出せる体制を整えることが重要です。
- 信託銀行等の利用を検討:「おひとりさま」に備えて、高齢期の生活や資産管理をサポートする信託銀行などの利用を検討しましょう。財産管理信託や遺言信託などのサービスで、認知機能の低下に備えた資産管理が可能です。
これらの情報を総合的に考慮すると、シニア世代は80歳を目安にリスク資産運用から徐々に撤退し、預金を取り崩しながら生活することを検討するのが一つの方法です。さらに、相続税対策として、生前贈与(年110万円の非課税枠)を検討するとともに、社会貢献活動への資金配分も考慮しましょう。

ただし、個人の健康状態、認知能力、経済状況などによって最適な年齢は異なるため、専門家や家族と相談しながら慎重に判断する必要がありますね。
全世代の共通事項
健康面
資産を有効活用するためには、何よりも健康的な生活習慣を心がけ、健康寿命を延ばすことが重要です。健康長寿を実現するために、以下の点を日々の生活に取り入れることをお勧めします。
オートファジー活性化
- 腹八分目を心がけ、週に数回、12時間以上の断食やカロリー制限のある食事日を設けましょう。また、適度な運動を取り入れて筋力と認知機能を向上させ、良質な睡眠と規則正しい就寝時間で心身のコンディションを整えましょう。
- スペルミジン(納豆や胚芽に多く含まれる)、ポリフェノール(緑茶やベリー類に豊富)、ウロリチン(ザクロやナッツ類に含まれる)といった栄養素を意識的に摂取すると、細胞の健康維持と老化防止に効果があります。
- 適度なストレスには体を強くする効果があります。軽い寒暖差への短時間の暴露、適度な強度の運動、週1-2回の短時間サウナ浴などで得られるホルミシス効果を活用しましょう。これらの適度な刺激は、体の適応能力を高め、免疫力の向上につながります。
運用面
投資詐欺に注意
「必ず儲かる」「リスクなし」といった投資話や、即断を迫る勧誘には細心の注意が必要です。少しでも不審に感じたら、ネット投資に詳しい家族や信頼できる専門家に必ず相談し、慎重に判断しましょう。

投資詐欺の手口は日々巧妙化しているため、最新の情報を常にチェックすることが重要ですね。
金融機関の利用状況を記録
ネット銀行やネット証券のID、パスワード、暗証番号は、セキュリティに十分配慮しながら、整理して記録しておきましょう。

特に複数の金融機関を利用している場合は、取引履歴、口座情報、各種手続きの方法を含め、家族にも分かりやすい形で文書化することをお勧めします。
最後に
資金運用は、健康長寿社会において、豊かで充実した生活を実現するための不可欠な要素です。特に、予期せぬ医療費や介護費用に備えた資金確保は、将来の安心した生活を支える重要な基盤となります。さらに、健康的な生活習慣の確立と維持は、長期的な資産形成と健康管理の両面に大きな影響を与えます。
2025年は、世界の社会経済情勢が大きく変動し、新たな課題や機会が生まれる転換期です。しかし、このような変化の時代にあっても、一人ひとりが着実な資産形成と健康増進に取り組むことで、持続可能で豊かな社会を築くことができます。私たちの選択と行動は、次世代に影響を与える重要な転換点となることを忘れてはなりません。
健康管理と資産運用の調和は「人生100年時代」の重要課題です。この二つは密接に関連しており、適切な健康管理は医療費の抑制を通じて資産運用を効率化し、一方で計画的な資産運用は質の高い健康管理を可能にします。この相乗効果により、生活の質が向上し、充実した老後を実現できると考えています。
シニア世代の皆様には、この記事を参考に、ご自身の状況と目標に即した資金運用戦略と健康増進プランを策定し、実践していただきたいと思います。個々の生活スタイルと価値観に合わせて、最適なバランスを見出すことが成功への鍵となります。
《参考情報》

